第6話 泥沼の世界
嫁子は借金の為に沼に嵌った、という事だろうとは思う。
俺は考えながら眉を顰める。
まあ何というか結局の話、俺の友人だけがドクズだったという事だな、とは思う。
しかしこれをしたのはアイツだけなのか?
何か嫌な予感がするのだが。
「やれやれ」
そんな事を呟きながら俺は空を見上げる。
翌日は休みだったので嫁子の実家に行く事にした。
正直言って何かがまだ信用が.....出来ない部分があるが。
でもはっきりさせたい部分もある。
そう考えながら工場地帯の寂れた商店街を抜けそしてやって来る。
インターフォンが無い家なのでドアをコンコンと叩いた。
すると声が。
「はーい」
「.....ああ。唯子ちゃんか?」
「うん。そうだね。.....あれ?お兄ちゃんじゃない」
「久々だな」
「うん。久々」
そんな会話をしながら俺はドアを開くのを見る。
右の髪の毛を結んだ小学生の唯子ちゃんが顔を見せる。
この子は小学校.....4年生だったな確か。
思いながら見ていると唯子ちゃんが俺をビックリした顔で見てくる。
「どうしたの?お兄ちゃん。.....何だか顔がかなり削げてるね」
「削げているのは何時もだから気にすんな。.....お姉ちゃんは?」
「嫁子お姉ちゃんは奥で料理してるー」
「ああ。そうなのか」
「特売だったから鶏肉使った料理ー」
「.....」
俺は困惑しつつ唯子ちゃんを見る。
すると唯子ちゃんは、そんな顔しないで。お兄ちゃん。嫁子お姉ちゃんも私も大丈夫だから、と笑顔を浮かべた。
その姿に俺は、ああ、と返事をする。
唯子ちゃんはしっかり分かっている様だ。
俺が何を考えているのか。
「ちょっとこの家に用事があったから来たんだ」
「うん?何の用事?」
「変わらずか?周りは」
「.....あ。うん。その事なら.....変わらずだね」
「そうか.....」
借金が500万円以上あるのも.....。
思いながら俺は唯子ちゃんを見ると。
唯子ちゃんは腹立たしい様な顔をした。
それから俺を見てくる。
あの親のせいだから、と切り出した。
「.....あの父親さえ居なかったらね。ドクズの血が私達に混じっているのが腹立つ感じだよ」
「そうだな。それは.....確かにな。どういう感覚か.....理解が及ばないが腹立つよな」
「借金だけ残して女作って消えたからね。私は許せない。絶対に許せないかな」
「.....だな」
そう言いながら唯子ちゃんは唇を噛んでいたが。
ハッとして俺にニコニコした。
それから、上がって。お兄ちゃん、と言ってくる。
俺はその言葉に、すまない、と話しながら上がる。
そして襖を開けて横を見ると。
「.....あ.....裕。来てくれたんだね」
「ああ。来た。.....うん」
鶏の料理の何かを作っている嫁子を見る。
そして嫁子は唯子ちゃんに指示をした。
唯子。お茶入れて、と。
すると唯子ちゃんは、あい、と言いながら飲み物を入れてくれた。
「昨日は.....ごめん」
「.....まあ昨日だけじゃ無いけどな。お前が説明しなかったから碌でもない事になっている」
「そうだね。うん」
唯子ちゃんは目の前で学校の宿題?をし始める。
俺はその姿を見ながら嫁子を見る。
嫁子は複雑な顔をしていた。
いつもよりも、数倍、だ。
深刻な顔をしている。
「.....嫁子。正直言って俺はまだお前の行動に許せない部分もある。全部を許せない」
「.....うん」
「だけどお前がしっかり話してくれて話を聞くのもアリかなって思った。お前が.....背負っているのも鑑みて」
「そうなんだね」
「ああ」
俺は嫁子を見ながら、お前のやった行動は絶対に許せるものでは無いと思う。でもお前の事だ。多分だけどアイツに。優に騙されたんだろ、と語る。
すると嫁子は涙を浮かべた。
そして俯く。
俺はその姿に、やはりか、と思う。
「お前が.....その。例の件をしたのは理由があったのか。無理矢理か」
「無理矢理には近いね。優さんに騙された感じではある」
「とことんドクズだな。信じられん.....」
「でも私も悪い。断れば良かったから。お金に目が眩んだ」
「.....」
俺は嫁子を見る。
嫁子は涙を浮かべながら、でももうこれしか方法が無いからね、と苦笑い。
それぐらい追い詰められているのか、と聞くと。
ソフトだよ。借りているのは、と答えた。
嘘だろ、と思う。
それって.....そのそれでも軽い闇金じゃね?
「ネット上であるよね。お金貸してくれるの。あそこで400万円借りた。コツコツ返したのが200万円。それに利子がついて500万円になったんだよね」
「.....解決策はあるのか」
「このまま警察に行けば、と思う。でもそれはまだ最終手段にしたい。最終手段の前に父親を殴りたいの」
「そうか」
マジにドクズばかりだなこの世は。
思いながら考え込む俺。
そして200万円に利子がついて500万円ってのも酷いな、と切り出す。
すると、だから私は身体を売るしかない、と答えた。
そして涙を浮かべる。
「でもそれは過ちだって思ってるよ。知っている。.....知ってるからやりたくない」
「.....信子さんは」
「お母さんは出稼ぎに行ってる」
「.....」
俺は頭を掻いた。
それからまた考え込んだ。
何も思いつかない。
解決策が、である。
すると、でも現状の解決策はあるから、と嫁子は切り出す。
そうしてからキッと前を睨む。
「父親を探し出して今の借金の全額を背負わせる」
「.....上手くいくのかそれは」
「そうだね。まあ上手くいかないかもしれないけどでももうこれしか無いと思うんだ。500万円とか普通は返せないと思うししかも相手が今直ぐに捕まるとは思えないし。私達も結局は訴えれないだろうから」
「.....そうなのか?」
「だって私達も含め悪に染まっているから。それに私達の父親は闇金からお金を借りているからね。そういう考えになってしまうよね普通は」
その言葉に眉を顰めて深刻に悩む俺。
それから目の前を見ると唯子ちゃんの手が止まっており。
そして俺達を見ていた。
俺達は顔を見合わせてから、大丈夫だ、と言う。
「大丈夫だ。不安になるなよ。.....お兄ちゃんも何とかするから」
「うん」
「.....」
とは言え。
そんな事を大っぴらに言った癖に解決策は何もない。
この家の親父を探して殴るしか方法は無いだろう。
さてどうしたものか、と思う。
そして窓から外を見ながら額に手を添える。
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