第13話 寝れない日

正直に言って俺は勇者では無い。

それからヒーローでも無い。

俺は単なる男子高校生だ。

だから何も出来ない野郎である。

正確に言えば今の状況は成り行き故に成り立っている様なもんだ。


「.....」


夜の事だが。

寝れずに天井を見ていた。

どうしたものか、と思える。


ここから先、だ。

どう島子とかに接触していくか。

するとポコンと音がした。


それからスマホにこんな時間にメッセージが来ているのを確認する。

俺は、?、を浮かべながら時計を確認する。

現在時刻は22時だが。

結菜からだった。


(起きてるかな?)


(起きてる。寝れない)


(夜分遅くにゴメン。許して。その。何か私も寝れないの)


(そうなんだな)


(うん)


俺は結菜の文章に納得し、何か話でもするか?、と聞いてみる。

すると結菜は、うん。それだったら嬉しい、と話をしてくる。

俺はその言葉に、そうか、と返事をする。


(俺さ。島子をどうにか出来ないかって思う)


(島子を?.....有難いけどそれは無理だと思う。彼女はこの道を強く選んだから)


(まあ確かにな。でもまだお前と一緒だった。だからワンチャンあると思うから.....どうにか出来ないかって)


(君は優しいね。ゆうちゃん大好きだよ。そういう所。でも今回は無理だと思う。彼女は戻らないと思う。彼女は彼女なりの何か正義があるみたいだからね)


(そうなのかな)


(彼女は.....憧れていた。私に。だからこそ裏切られたショックがデカいんじゃないかなって思って)


(憧れ故、か)


(そうだね。憧れ故、だよ)


結菜は打ちづらそうな文面を送ってくる。

俺はその文章を見ながら横になった身体を起き上がらせる。

それから、結菜、と文章を打つ。

結菜は、何?、と聞いてくる。


(俺、島子と話をしたい。明日ぐらいに呼べるか?)


(え?そ、それはどうか分からないけど。呼ぶの?)


(言ったろ。俺はお前の十字架を背負う手伝いをするって)


(それはそうだけど.....でも話を聞くかどうかの問題があるね。心を閉ざしているから)


(まあ確かにな。でもな。話をしないと分からない部分も必ずあると思うから)


(そうだね.....うん。君が言うならそうだよね)


でももし島子が話をしなかったらゴメン。失礼を掛けると思う、と結菜は心配げな文章を送ってくる。

俺はその言葉に、気にする事は無い、と笑みを浮かべて切り出す。

すると結菜は、有難う、と送ってきた。


(君のそういう所が好きだよ)


(いやいや。良い加減にしろよ。そういうの誤解するからな?)


(うん?そうかな?あはは)


(割とマジに誤解する)


(どう誤解する?)


(いや。それは)


ニヤニヤする感じで文章を送ってくる結菜。

俺はその姿に苦笑いを浮かべながら反応する。

それから、もう良いか?寝るぞ、と無理に話を切る。

すると結菜は、はーい、と納得した。

俺は苦笑をまたする。


(私は君達に出会えて良かった)


(あのな。寝るって言ったろ。寝れなくなるんだが!)


(だって私の本音だしね)


(へいへい)


それから結菜からは、おやすみ、とメッセージが来た。

俺は、おやすみ、とメッセージを送る。

そして寝た。

思った以上に会話していた様だ。

直ぐに寝れた。



「おはよう」


「何してんのお前さん」


起きてから階段を降りて驚愕した。

すると目の前に結菜が居たのである。

台所で作業している。

するとその姿に、私が来たかったからね、と笑顔になる。

俺はそんな結菜に、そうか、と答える。


「しかしいきなり来られるとビックリするんだが」


「まあ確かにね。私も来るつもり無かったけど。でもゆうちゃんが今日はねぼすけで起きるかどうか分からなかったからね」


「そんなワケあるか。起きるに決まってるだろ。学校あるしな」


「確かにねぇ。でもこういうのも良いでしょ?モーニングサービスってのも」


「まあな。確かにまた別の感じがして良いかもな。俺としては」


「でしょ?あはは」


結菜は言いながらふろふき大根を出した。

マジにお婆ちゃんかな?

俺は苦笑いをまた浮かべながら湯葉の何か巻物らしき物も見る。

で、結菜に聞いてみる。


「結菜。お前って和食好きなの?」


「和食好きだね。和食以外あり得ない」


「ふむ」


「和食こそ天下でしょ」


「俺は洋食もありだと思うぞ。お前なら上手に作れるんじゃないか」


洋食はねぇ、と顔を難しくする。

俺は、?、を浮かべながら結菜を見る。

結菜は、何かあまり良い思い出が無いから、と答えた。

ますます、?、が浮かんだが。


「まあ嫌なら嫌なんだろうから何も言わないよ。ただお前には似合うって思っただけだから」


「有難う。まあそんな感じで苦手な分野もあるという認識でお願いね」


「ああ」


正直、洋食も似合うとは思ったが。

本人が何か過去があり嫌なら無理に言う必要も無いな。

思いながら俺は結菜を見る。

それから続々と料理、食い物が.....。

こんないっぱいには食えんだろ。


考えながら、結菜。作りすぎじゃないか?、と聞いてみる。

すると結菜は、だね。まあ夜に食べて、と柔和に答える。

俺は、やれやれだ、と言いながらも。

感謝の意を露わにした。


「まあお前がそう言うなら夜に食うわ。有難うな。夜も食えるなんざ楽しみだ」


「有難う。まあまあそう言ってもらうと作り甲斐があるねぇ」


「だからお前はお婆ちゃんか」


「私はお婆ちゃんに近いから」


やれやれ。元不良とは思えないよな。

思いながら俺は結菜の作った料理を食べ。

それから登校した。

そして。

また島子に会った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る