第12話 裕と優樹菜(2)

助けられなかった。

俺はその言葉を聞きながら.....結菜を見る。

結菜は過去に懺悔している様な感じだ。


その場合は仕方が無いと思うのだが。

でも結菜にとっては本当に心にも身にも深かった事なのだろう。

だからこそ何も言えなかった。

家に帰ってから夕暮れ時になりながらも悩む俺。


「.....まさか嫁子の浮気疑いだけでこんな事になるとはな」


俺はそんな言葉を呟きながら天井を見上げる。

それから椅子でクルクル回転する。

そして後頭部に手を添えていた。


そうして暫く回転してからそのまま目の前の宿題に手をつける。

取り敢えずは.....勉強だな。

そう思いながら取り組み始めた。

しかし結菜の事で飽きが直ぐに回ってくる。


「.....どうしようもねぇな」


そんな事を呟きながら居ると、コンコン、とノックがあった。

俺は、はい、と言うと。

優樹菜が顔を見せる。

それから、頑張ってる?、と聞いてくる。

揶揄っているのか.....?


「.....揶揄っているのかお前は」


「違うよ。.....頑張っているかなって応援に来ただけ」


「.....そうか。しかし本当の目的は漫画だな?」


「まあそうだね」


「直球だな」


そんな会話をしながら漫画を手に取る優樹菜。

俺はその姿を見ながら苦笑しつつ勉強する。

すると、ねえ。お兄ちゃん、と声がした。

俺は顔を上げて優樹菜を見る。

優樹菜は寝っ転がったまま漫画を読んでいる。


「.....結菜さんは大丈夫かな」


「.....まあ正直ずっと考えていた。.....結菜の事をな」


「.....不良って何だかイメージが良く無いけど結菜さんを見てからイメージ変わったなぁ」


「それは確かにな。.....俺もイメージ変わった」


「結菜さんの過去って衝撃的だね」


「ああ」


返事をしながら俺はまた天井を見上げる。

すると横に優樹菜がやって来た。

それから、進んでないね、と苦笑いを浮かべる。

そんな優樹菜に、見るなよ、と話す。


「.....まあでも同じだよ。.....私も手が付けられない。心配だよね。.....シンパシーだよ」


「.....シンパシーね。.....確かにそうだな」


「.....私は発達障害.....があるからあまり人と仲良くとか。.....特にそんな人達と関わり合い無いけど.....でもきっと悩んでいるんだよね。私と同じで」


「そうだな.....きっと同じだよ」


「.....不思議だね。人間世界って.....」


それは確かにな、と答えながら俺は優樹菜を見る。

優樹菜は俺の言葉に柔和な顔をしてから。

真剣な顔をする。

どうしたものかね、と言いながら。

俺は、そうだな、と答えながら、でも今は救済のしようが無いから見守るべきだな、と答える。


「.....そうだね.....。私もそれしか無いと思うけど。.....でも何とかならないのかな」


「今は正直手は無いな。あまり話さなかったしな。結菜」


「うん」


「今は結菜が全てを話してくれるまで見守ろう。.....あまり下手に手を出したらダメだ。お前は優しいけど.....だからこそ、だ」


「うーん。それはお兄ちゃんもでしょ」


「.....まあ確かにな」


俺は苦笑しながら教科書を閉じる。

そしてノートも閉じた。

もう何も思い浮かばないし。

思いながら、なあ。優樹菜、と告げる。

優樹菜は、?、を浮かべて俺を見てきた。


「ゲームしないか」


「.....ゲーム?負けないよ?」


「そうだな。古代のゲームだけど」


「あー。スーファミとかかな」


「そうだ。何だかゲームしたいから」


この家には色々なゲームがある。

それは親父が残していったものだ。

親父がゲームマニアだったので.....ゲームがいっぱいある。

未開封のプ◯ステ1、2、3、4、5とかもある。

そんな感じで全てフルスロットルだ。


「今日は何するの?」


「.....そうだな。グラ◯ィウスとか?」


「グラ○ィウスならコントローラーを用意しないと」


「あれって2P出来るよな?」


「そうだねぇ。出来るよ。でもチート使わないと先に進めないでしょ」


上下上下右左みたいなやつな。

思いながら考える。

そして早速と用意を始める優樹菜。

すると優樹菜が、お兄ちゃん。コントローラー何処にしまったっけ?、と振り向く。

その途端に積み上がっている本に頭を打つける優樹菜。

それから本棚の本が崩れた。


「危ねぇ!」


「.....!」


それから優樹菜の頭を守る。

そして床に倒れる。

まさか落ちてくるとは。


思いながら優樹菜を見る。

優樹菜を押し倒す形になっていた。

目を丸くした優樹菜は俺に対して、も、もう。お兄ちゃん。そういうのは次に出来た彼女さんにしてあげて、とゆっくり立ち上がる。


「全然危なくないよ。あまり本無かったし」


「そう言ってもな。.....お前は妹だから。万が一の事があっても防げん」


「.....もー」


「俺はヒーローだからなぁ。お前の言った通り」


「.....まあ確かにそうだけど.....今それを使う時じゃ無いでしょ」


そんな会話をしながら俺達はクスクスと笑う。

しかし部屋が埃まみれの本だらけの大惨事になってしまった。

本棚が崩れるとはな、と思う。

それから崩れた本を拾い上げる俺。


「.....お兄ちゃん」


「.....何だ」


「有難う」


「何に対してか分からないが.....今のやつなら気にすんなよ?俺が危ねぇと思ったからな」


笑みを浮かべる優樹菜。

俺は柔和に言いながら俺は本を拾い集めてから。

優樹菜も手伝ってくれてからの。

全て片してからゲームを始めてみる。


やっぱり難しかった。

グラ◯ィウスは.....うん。

我ながら下手な選択だったな。

ボムとかなかなか出ないし。

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