第14話 誘拐

先ず島子に会ってどうするのか、という点だが。

俺はどうあれとにかく先ずは島子と色々と話をしたいと思った。

それから俺は島子を見る。

一時的に俯いてから顔を上げた島子は真顔のまま俺を見る。


「.....何でしょうか?」


「島子。.....俺さ。お前と色々と分かち合いたい部分がある」


「.....」


「だからその.....とも.....」


「私は戻りません。其方の道には」


島子はそう言いながらヒソヒソ話をしている周りを見る。

そして真っ直ぐに俺を見据えてくる。

俺はその姿を見ながら、私は結菜に裏切られた。.....許せませんので、と語る。

その姿を見ながら眉を顰める俺。

それから島子を見る。


「.....まさかと思うがお前が噂を流したのか。.....結菜の」


「そうですね。.....私が仕組みました。.....これが私なりの復讐です」


「お前.....」


「恨むなら恨んで下さい。.....私は亡くなった仲間を見殺しにはしたくない」


「.....」


思いっきり悩む俺。

それから見ていると島子は、用事はこれだけですか?、と聞いてくる。

そして踵を返す島子に俺は何も言えず仕舞いだったが。

待て、と言葉が出た。


「.....はい」


「お前はこれで良いのか。今なら引き返せる。絶対に」


「.....良いも何も。こうするしか方法が無いので」


「.....」


そして俺は島子を見送る。

それから.....放課後に至ったが。

島子の行方が分からなくなった。

何処に行ったか分からなくなったのだ。



「どうなっているの.....!」


学校に昼休み以降、鞄を残して何処かに行った島子に対して結菜がそう言う。

そして電話を何度も島子に掛けるが繋がらなくなっていた。

俺は、落ち着け、と告げるが。

でも、と結菜は言う。

確かに外にゴミ捨てに行って学校から居なくなったのはおかしいよな。


「.....何処に行ったんだろうな」


先生達も警察に相談するか検討している状態だ。

学校内を必死に探している様だが。

今、俺達はそれに関われないので電話を掛けていたが繋がらない。

電波が立ってないしな。

すると.....それを考えていると俺のスマホに電話が掛かってきた。


「.....?」


080から始まる電話番号だった。

俺はスマホを開く。

そして電話に出ると女が出た。

もしもし、と言ってくる。

誰だコイツ、と思っていると。


『初めましてかな。友山裕くん』


「.....お前誰だ」


『レッドピースのメンバーの結菜を知っているな。.....ソイツを出してもらおうか』


「.....いきなり生意気だなこの野郎。.....お前誰だ」


『私は総長の西田唯子。.....結菜と島子に因縁のある相手。この番号を金くれた奴に聞いた。.....丁度、結菜の番号が分からなかったから仕方がなかったけど』


「.....金くれた奴はさておきだが.....島子は無事か。その言い方だと連れ去った様な感じの言葉に聞こえる」


さあ。無事かどうかは私達の所に来てから判断しな。

その様に言いながら西田は笑う。

俺はその言葉に結菜を見る。

結菜も嫁子も心配そうに俺を見ている。


「.....ねえ。ゆうちゃん.....誰と話しているの?」


「.....何かの総長だそうだ。西田唯子って知っているか」


「.....西田.....」


その次の瞬間。

ハッとしてから結菜の目付きが変わった。

あ、これマズイ、という感じの目付きだ.....。

俺はその姿に顔を引き攣らせる。

そして俺からスマホを受け取ってから、フォールドエマーさん。何様かアンタ?、と話をし始める。


『元総長のお出ましか』


「.....アンタ当時は部下だったでしょ。.....何でかな」


『.....とある人物に依頼を受けたのもあったけど.....でも先ずはアンタらに復讐したくてね。.....だからこうしているんだっての』


「.....アンタ」


『おー。怖いね。.....まあ島子さんの事だけど無事じゃ無いかもね。.....アハハ』


「待ってな。.....直ぐ行くから」


そしてスマホを放り投げてくる結菜。

俺は、お、おい。どうする気だ、と聞くと。

結菜は、決まっているでしょ。人の命が掛かっているんだから救いに行くに決まっている、と答えた。

嘘だろおま。


「おい。当てはあるのか.....っていうか!こういうの先生達を待てって!」


「そんな事をしている暇は無いよ。.....島子が死んじゃうかもだから」


「.....し、しかし」


「.....私は行くから。.....取り敢えず待ってて」


「.....」


そして結菜は格好良い笑みを浮かべる。

ニヤッと男らしい感じの。

いやそんな笑みを浮かべてもらっても。

思いながら結菜は駆け出して行く。


「.....どうする?幾ら何でもアテが.....」


「取り敢えず.....サポートぐらいしかしようが無いけど.....」


「そうだね.....だけど.....このままじゃ。.....行こうよ。裕」


俺達は悩んだ末に。

結菜のサポートをする為に内緒で結菜を追う。

そして駆け出して行った。

因みに結菜にバレない様に行動をする感じで、だ。

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