すべては所詮、愛の偽物。

それぞれの“ニセモノ”に囚われている二人の女性。
彼女達が本物の愛を見つける物語だと受け止めました。

非情に現実的でシビアな世界観で描かれる、同性婚の認められた世界。
近未来的な技術も登場しますが、リアルな描写と綿密な設定で、
現実の出来事のように感じられます。

まるで一本の映画を見終えたような読後感です。

遺伝子ベンチャーという会社が舞台ですが、それだけでもう何かあるという予感がします。
そして主人公は同性専門の恋愛詐欺師で（この設定もすごい）、自分の心に忠実で、仕事？に対してもストイックで人たらしで、読者もその魅力に嵌まってしまいます。

更にこの作品は色々と難しい問題を提示していて、将来こういうことがあるかも、と思わせています。
その近未来に、この作品のテーマ「偽物」が上手くちりばめられていて、それが妙にリアルで怖さも感じました。

さて、主人公は様々な人々の思惑が絡みあう中、最後に大がかりな仕掛けを施しますが……
詐欺師のプライドが光る、良い作品です。

もしかしたらこんな世界が来るかもしれないと思わせる世界観がすごいです。
同性婚が認められた世界で、同性間で子供を作るという、ありえそうにない展開なのですが、設定が緻密で容易に入り込めます。

例えば条約、法案といった制限がされている上で、政府、企業というそれぞれの視点で障害を突破していく過程が、とても奥深い！
まるで、未来の新聞を読んでいるかのような情報量です。

ただし、本題はコンゲームの方です。
本作品は「偽物」というテーマで書かれていますが、このテーマが信じられないほどに根深く張り巡らされています。

その全てを上げることができないのは残念ですが、取り上げておきたいのは主人公の詐欺師と…続きを読む