なぜだ

 文句なし。圧巻。圧倒。圧勝。

 マスコミとデスゲームの結びつきは、古いところではキングがバックマン名義で書いた『バトルランナー』、最近なら映画でジョシュ・デュアメルが主演した『スーサイド・ライブ』辺りが思い出される。いずれにせよ王道の一つと考えていいだろう。

 主人公は、なぜ死なねばならなかったのか。それがなぜあの結末になったのか。

 本作は、デスゲームそのものの面白さもずば抜けている一方でテレビ番組制作の舞台裏も楽しませてくれる。陳腐な天使の格好をした連中は、羊の皮をかぶった狼……否、視聴率の亡者だ。自殺志願の生ける亡者として脱落者に一番近かったはずの主人公が、一番まともな良識を備えているのは皮肉としかいいようがない。

 本作はまた、様々な社会問題にも鋭く切りこんでいる。特に白眉なのは、ホストに入れ込みすぎた女性と息子が凶悪犯罪者になって絶望した男性の乱闘だろう。まさに絵図や画像が頭の中で動き出しそうですらあった。

 あと、そばはたぬきわかめが良さそうだ。

 必読本作。

 

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