第13話 平安姫、外堀を埋められる
「分かった。イザベルはどうしたいんだ。流石に無罪という訳にはいかない」
「王宮の一室で幽閉かの。できれば、われの部屋となる予定の部屋から近い部屋で頼む」
「理由は?」
「話し相手がおらぬとつまらぬじゃろ?」
イザベルの言葉にルイスは大きく溜め息を吐いた。
「分かった。幽閉は譲ろう。だが、場所は牢だ。イザベルの願いならば、その中でも過ごしやすい牢に入れよう」
「……そこは、われも遊びに行けるかの?」
リリアンヌに会いに行こうとするのを止めないイザベルにルイスは頭が痛くなってきた。
だが、可愛いイザベルを殺そうとしたヤツの傍には行かせたくないので、何としてでも説得をしなければならない。
「遊び相手が欲しいなら他の令嬢にしてくれ」
「嫌じゃ。われには誰もが遠慮して本当のことを言わぬ。本心を言ってくれたのは、るいすとみーあ、それから……そこにおる、りりあんぬだけじゃ」
イザベルは記憶が戻る前から、案外周りを見ていた。
冷静にさえなれれば彼女は王妃の素質はあったのだ。だがカッとなりやすく、自己中心的過ぎる性格なため、素質はあれど務まる器ではなかったのだが。
「それに、りりあんぬは本当に殺そうとは思っておらん」
「どういうことだ?」
「飛んできた軌道が少し左にずれておった。あれでは、腕しか怪我をさせられぬ」
(何でレイピアの軌道が分かる? だが、嘘をついているようには見えない)
ルイスは、イザベルがリリアンヌを助けるために嘘をついているのではないか……という疑いを持ったが、あまりにも自信満々に言うので疑惑を打ち消すことにする。
「あれだけ綺麗に投げられるのじゃ。迷いがなければ、或いは最初から命を狙っていないとしなければ心の臓など簡単に捕らえよう。
のう、りりあんぬ。そちはどうしたい。やはり、死にたいか」
真っ直ぐにイザベルはリリアンヌを見る。その視線に耐えられなくて、リリアンヌは視線を
「別にどっちでもいい」
不貞腐れたような言い方にイザベルは笑った。
(自ら命を絶つのが怖いと、他者にさせようとした子が、随分と前向きになったようじゃの)
「ならば、生きよ。生きて償うのじゃ」
イザベルがそう告げた瞬間、割れんばかりの拍手が起こった。
「イザベル皇太子妃 バンザーイ!!」
誰か一人がそう言えば、次々と皆が口にする。
そうして、気がつけば会場内はイザベルを次期王妃として認める雰囲気となっていた。
「なっ、何なんじゃ!?」
おろつくイザベルにルイスはにんまりと笑う。
(予想外ではあったが、これはこれで良い結果となったな。これでイザベルを直ぐにでも私のものにできる)
ルイスはイザベルの細い肩を抱き、小さな声で話しかける。
「月に一度であれば会わせよう」
そう言うとルイスはイザベルのこめかみに口付け、会場内は更に盛り上がったのだった。
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