第16話 われわれ③

それから私は、再び研究室に閉じこもる日々に戻った。


キャンパス内で時折Nを見かけることはあったが、Nも資料を抱えて忙しそうにしていたので話をする機会は無かった。


例の物が気がかりではあったが、Nは相変わらずの様子だったので、私は安心していた。


「あいつはそういう影響を受けない質なのだろう」


それが私の出した結論だった。



それからしばらくしたある日のことだった。


Nの恋人のY子が私のもとを訪ねてきた。


「どうしたのか?」と尋ねると、Y子は泣きそうな顔で言った。


「Nと別れた」


私は驚いた。


二人は非常に仲が良かったからだ。


そのうえ、この様子だと別れを切り出したのは、どうやらNの方だった。


しかしあのNが、自分から彼女を捨てるようには思えなかった。


私は嫌な予感がした。


Y子の話では、Nはなんの説明もなく、突然別れを切り出したのだという。


せめて理由だけでも知りたいと、Nと親交のあった私のもとを訪ねてきたという。


「Nに会って話を聞いてきてくれないかな?」


それが彼女の願いだった。


このまま二人の仲が終わってしまうことが残念に思えた私は、その願いを聞き入れることにした。


その夜、私はさっそくNの住むアパートへと向かった。



続く。

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