第14話 われわれ①

大学の同級生にオカルトマニアのNという男がいた。


酒の席で「視える」などと、うっかり口を滑らせたのが縁で、それ以来何かにつけて家へ呼ばれるようになってしまった。


Nは気の良い男だった。


いつもすきっ歯を覗かせてニコニコと愛想が良かった。


それをキモいと揶揄する女性陣もいたが、本人は特段気にする様子もなく、いつの間にかキモいキモいと言われながらも打ち解けてしまう、そんな男だった。


そんなNの趣味は呪物や障りのある物品の蒐集だった。


Nいわく


「俺さ俺さ、どーっしてもっ! 幽霊見てみたいんだよね!」


とのことらしい。


そんなNの前で「視える」と口を滑らせたのが運の尽きで、私は見たくもない蒐集品の鑑定をする羽目になった。


ガセネタがほとんどだったが、中には気味の悪い本物もあった。


しかし私はNの身を案じて適当な答えしか出さなかった。


それでもNは真剣に私のデマカセに耳を傾け、うんうんと話を聞いていた。


やがて研究室に配属された私は、莫大なレポートと資料に追われてNの鑑定依頼からは遠ざかってしまった。


そんなある日のことだった。


夜遅くまで研究室で分析の結果を待っていた時のこと、私の手持ち無沙汰を見透かしたようにNから電話がかかってきた。


「深川ちゃん…! ヤバい物が手に入っちゃった…! お願い! 一目でいいから見てみて! 鑑定して!」


Nは興奮気味に言った。


分析結果が出るにはまだまだ時間がかかりそうだったので、私は休憩がてらNの家に行くことにした。


続く。

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