第2話 ダムの穴
幼稚園の遠足での出来事。園児達が引率の先生に連れられ、ニ列になってぞろぞろとダムの縁を歩いていた。
分離不安だった私は先生の真後ろにぴったりとくっつくようにして列の先頭を歩いていた。
ふとダムの水面に目をやると気味の悪い渦がゆっくりと回転するのが見える。
「先生あれなあに?」
恐怖に慄きながら私は先生に尋ねた。
先生はしばらく目を凝らしてから「ああ」と得心したように呟いて話はじめる。
「あれはね、ダムの水を川に流すための穴だよ。お風呂の底にあるやつの大っきいの」
私はもう一度ダムを見たがそんな穴は何処にも見当たらなかった。そこにあるのは深緑と黄色、そしてどす黒い重油のような三色のブヨブヨが分離して回転する、気味の悪い渦だけだった。
あれは絶対に排水用の穴などではない。もっと悍ましい場所に繋がるナニカだ。
今でもダムの水面を見ると思い出して身震いすることがある。
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