第6話 忌骨

斎場がにわかにざわついた。

職員が慌ててどこかに電話し、しばらくすると一人の若い住職が現れた。


これは忌骨と言います。


彼は静かにそう言うと、祖父の骨の中からひとつを取り上げて真っ白な布で丁寧に包んだ。


その手は表情と裏腹に僅かに震えているようだった。


恐ろしい姿形をしておりますが、然るべき供養をすれば恐ろしいことはありません。


この地域では昔から、度々このような骨を持つ者が現れるのです。


そう言って住職は経を上げると忌骨を持って寺へと帰っていった。




その夜、寺は大規模な火災に見舞われた。


本殿は全て焼け落ち、消し炭と化した柱の残骸が墓標のようにいくつか残るだけの大火事だった。


本殿の奥の間に位置する焦土の上には、焦げ跡ひとつない忌骨が、並んで転がっていたという。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る