目覚めよ、死ぬために
- ★★★ Excellent!!!
※追記)ネタバレはありませんが、真っ白の状態で読みたい方は読了後推奨
デスゲームの古典といえばアガサクリスティ「そして誰もいなくなった」だろう。
孤島に集められた成年の男女が、マザーグースの童謡「Ten Little Indians」の歌詞にそって、ひとりひとり死んでいく。
こちらでは孤島ではなくクルーズ船に集められている。
船は二隻ある。
集められた十人はみな、父親が共通だ。父親の名は和邇士郎。
遺伝子操作された優秀な子どもたち。
巨大基幹産業企業SANDORAの後継者になるのはそのうちの一人でよいという。
海上の密室、豪華客船に集められた少年少女。
憶えるのが大変そうに想えるが、こういう時にはごく簡単でいいのでメモを取りながら読むと、全員あたまに入る。
わたしのメモはこんな感じ。
(メモ)
白石=イケメン。翠が好き。
翠=超絶美少女。
石黒=スパイ。メガネで背が高い。翠が好き。
赤城=マフィア。ヤバイ。
青山=がっちり体型エンジニア。
美墨=赤城のお気に入り
朱音=技術者
草野、葵衣=飛び級医大生
茉白=プラチナブロンド
そして消えた人間には印をつけるか線を引いていく。
作者さまには申し訳ないような適当なメモだが、登場人物を一度自分の頭に落とし込むことで、それだけでストーリーはすいすい頭に入る。
彼らは全員、厄介なウイルスに感染しており、仲間の血をすすり、数日後には互いの肉を喰らわねばならない運命にある。
船内研究室でのワクチンの開発が早いか、食人鬼化するのが先か。
総勢十人。彼らがいるのは左の船だ。
では右の船には……?
Who caught his blood?
I, said the Fish,
with my little dish,
I caught his blood.
誰が彼の血を取った?
それは私、と魚が言った
私の小さなお皿にね
私が取ったよ彼の血を
血を啜り合い、船内を逃げ回り、共喰いしたい欲望に振り回され、知恵と友情を絞り合う十代の少年少女たち。
Who'll toll the bell?
誰が鐘を鳴らすのか?
I'll toll the bell.
わたしが鳴らそう (「Who killed Cock Robin ?」)
ゲーム終了の鐘の音の鳴る時を、彼らは待っている。