目覚めよ、死ぬために

※追記)ネタバレはありませんが、真っ白の状態で読みたい方は読了後推奨


 デスゲームの古典といえばアガサクリスティ「そして誰もいなくなった」だろう。
 孤島に集められた成年の男女が、マザーグースの童謡「Ten Little Indians」の歌詞にそって、ひとりひとり死んでいく。
 こちらでは孤島ではなくクルーズ船に集められている。
 船は二隻ある。

 集められた十人はみな、父親が共通だ。父親の名は和邇士郎。
 遺伝子操作された優秀な子どもたち。
 巨大基幹産業企業SANDORAの後継者になるのはそのうちの一人でよいという。

 海上の密室、豪華客船に集められた少年少女。
 憶えるのが大変そうに想えるが、こういう時にはごく簡単でいいのでメモを取りながら読むと、全員あたまに入る。
 わたしのメモはこんな感じ。

 (メモ)
 白石=イケメン。翠が好き。
 翠=超絶美少女。
 石黒=スパイ。メガネで背が高い。翠が好き。

 赤城=マフィア。ヤバイ。
 青山=がっちり体型エンジニア。
 美墨=赤城のお気に入り

 朱音=技術者
 草野、葵衣=飛び級医大生
 茉白=プラチナブロンド

 そして消えた人間には印をつけるか線を引いていく。
 作者さまには申し訳ないような適当なメモだが、登場人物を一度自分の頭に落とし込むことで、それだけでストーリーはすいすい頭に入る。


 彼らは全員、厄介なウイルスに感染しており、仲間の血をすすり、数日後には互いの肉を喰らわねばならない運命にある。
 船内研究室でのワクチンの開発が早いか、食人鬼化するのが先か。
 総勢十人。彼らがいるのは左の船だ。
 では右の船には……?


 Who caught his blood?
 I, said the Fish,
 with my little dish,
 I caught his blood.

 誰が彼の血を取った?
 それは私、と魚が言った
 私の小さなお皿にね
 私が取ったよ彼の血を


 血を啜り合い、船内を逃げ回り、共喰いしたい欲望に振り回され、知恵と友情を絞り合う十代の少年少女たち。


 Who'll toll the bell?
 誰が鐘を鳴らすのか?
 I'll toll the bell.
 わたしが鳴らそう (「Who killed Cock Robin ?」)

 ゲーム終了の鐘の音の鳴る時を、彼らは待っている。

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