第17話
目の前の召喚されて、宙に浮いている精霊に向き直った俺は早速話しかけた。
「俺がお前達を召喚したセイヤだ、これからよろしく頼む」
俺の言葉に精霊たちは互いに顔を見合わせ、何かしら意思疎通をしたのかイフリートが口を開いた。
「マスター、オレたちを召喚した理由は何だ?」
「ふむ、理由は簡単でな。お前達を召喚するとダンジョン内の環境が良くなるからというのが理由だ。まあ、自然の化身と呼ばれることもある精霊の戦力を期待したというのも少しあるがな」
俺は正直に答えた。てか、イフリートってオレっ娘なのね。これは萌えポイントでは?
「本当にそれだけか?オレたちはダンジョンモンスターとしてマスターに忠誠を誓っているが、とてもじゃ無いが環境を整える為だけに召喚したとは思えないんだが...」
まあ、そう思われても仕方ないか。
「そう思うのも無理はないかもしれないが、事実だ。それに、ダンジョンモンスターとして生まれた以上、ダンジョンに関する知識もあるだろうが、このダンジョンは未完成でな。この階層より上は完成はしているが、そこに配置しているのはスポーンモンスターのみでな。この階層で召喚モンスター達を育てるつもりなのだが、それにあたって環境を整えるのは急務と言える。だから、最初にお前たちを呼んだんだ。このあと、ドライアドなどの他の精霊も呼ぶ予定だしな」
「そうなのか」
どうやら納得してもらえたみたいだな。
「故にお前たちにはダンジョン内の環境を整えてもらいたい。今は草原しかない階層だが、必要なら山や河、湖や海、森や沼地なども用意しよう。遠慮せずに言ってくれ」
「いいのか!?」
俺がそう言うと、俺と話していたイフリートや他の精霊たちが目を輝かせていた。
そんなに山などを追加されるのが良かったのか?
「ああ、もちろんだ」
「なら早速頼む!」
そうして、俺はイフリートや他の上位精霊の言われるがままに施設を配置することとなった。
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「それで?まずは何から配置するんだ?」
「ああ、まずは山と森、それからその中を通るように川を作ってくれ」
「はいはい」
俺は言われるがままに山と森をいくつか作り、それらの中を通るように大きな河から小さな小川まで様々な川を作成した。
「こんなものでいいか?」
「ああ、多少大雑把でも後からオレたちで手直しするからどんどん置いてってくれ。次は湖と少し盛り上がった丘、それから海を作ってくれ。あと、火山とか滝とか特殊なやつも置いて欲しいんだが、いいか?」
「もちろんいいぞ、欲しい設備があればどんどん言え」
いやぁ、一ヶ月DPを貯めておいて良かった。流石に山やら森やら大規模な施設を置くとどんどん減っていく。精霊たちを呼ぶのでもそこそこ消費されたしな。でも、俺の安全及び趣味のための下準備と思えば何ら問題は無い。それに最終的にはダンジョンモンスターたちの安全にも繋がるからな。
「うん、いい感じ。それじゃあマスター、ある程度環境が整ったらまた来るから少し待っていてくれ」
そう言って精霊たちは新しく出した山や川に向けて飛んで行った。
ふう、上手くいって良かった。まあ、イフリートたちもまだ開通していないダンジョンに召喚されるとは思わなかっただろうな。いくら新たに産まれると言っても、色々な知識は持って生まれるだろうから違和感がすごかっだろうに。
「ミアとリエラもまだ話しているみたいだし、俺はイフリートたちが戻って来るまでゆっくりしたいよう」
そう呟いた俺は、今までほとんど風が吹かなかったのに、エアリアルたちのおかげか心地よい風が吹いている草原に寝転がって昼寝を始めた。
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「...スター、起きてくれマスター!」
「おう?」
誰かに起こされた俺は、ぼんやりした状態で周りを見た。
「おお、イフリート。もう調整は済んだのか?」
「ああ、マスターが惜しみなく色々置いてくれたおかげで、オレたちも思い切り手を加えることができた」
へえ、それは良かった。そう言われてみると、風が吹き始めただけでも心地良かった草原がぱっと見変わっていないのに何とも居心地の良い感じになっている。
ミアに勧められたとは言え、ここまで効果があるとは、さすが精霊って感じだな。
ん?そう言えばミアたちは?
そう思いこやを見てみると、何か変なオーラみたいなものが立ち上がっており、触れない方が良さそうな感じだった。
何やってんだアイツら、てかマジで怖いんだが?
まあ、一旦置いておこう。触らぬ神に祟りなしだ。
「それでイフリート、調整が済んだのなら他の精霊も呼んでいいのか?」
「ああ、他の精霊たちは精霊たちで何か要求はあるだろうが、オレたちが手を加えて環境は良くなっているから気にいると思うぞ」
「ならいい。感覚的にそこまで時間も経っていないみたいだし、よく短時間で調整してくれた」
俺がそう褒めると、イフリートを始め精霊たちは照れたような仕草をした。普通にかわええな。
「それじゃあ、他にも呼ぶ予定だった精霊たちを呼ぶとしよう」
俺はそう言って、精霊を召喚した。
そうして出てきたのは、四体の精霊だった。
外見がエアリアルに近く、少女ではなく大人の女性で、体に植物の蔓が絡まった植物の精霊ドライアド。
金髪金眼で、二十歳ほどの女性の外見をした光の精霊ルミナス。
黒髪銀眼で、十代後半の少女の外見をした闇の精霊シェイド。
透き通った白い肌に赤い髪を持った美女、鉱山の精霊マンイ・ディ・オウロ
うーん、見事に女性だけだ。何でだろ?
今回は下級精霊はいないのかって?まあ、召喚すれば出てくるのだろうけど、ドライアドにはこれから先作る予定の果樹園やら畑やらの管理をしてもらうつもりだから今の所は呼ばなくていいだろうし、光と闇の精霊は元々数が少いぶん、個体ごとの力が強いらしいので下級精霊を何体か召喚しても意味がないらしいから今は召喚しない。最後にマンイ・ディ・オウロだが、彼女を召喚した理由はキュクロプス達が鍛治などをするにあたって、金属を採取する鉱山を管理してもらう予定だ。鉱山の下級精霊がいるのかは知らん。木材が必要になったらドライアドに頼むのもいいだろう。
「俺は、セイヤ。お前達の主人だよろしく頼む」
俺がそう言うと、ドライアド達は頭を下げてくれた。
「ドライアドとルミナス、シェイドはイフリート中のダンジョンを案内してもらってくれ。何かしら欲しい施設があれば俺のところに来て言うといい。マンイ・ディ・オウロもついて行ってくれ。お前に管理してもらおうと思っている鉱山はまだ作っていないからそれまでは他の精霊達と一緒にしてくれ」
俺は彼女達にそう言い放ち、彼女達も頷いた。
「あの、マスター。私、欲しいものがあるのですがよろしいでしょうか?」
「なんだ?」
お?早速要望か、聞けるだけ聞こう。
「あの、私は植物の精霊ですが、個人的に花が好きなので花畑が欲しいなと。あと、精霊の泉というものがあるのですが、これは精霊にとって居心地のいい場所なのでできれば欲しいです」
「おいッ!流石に精霊の泉をねだるのは無しだろう!?詳しい数字は知らないけどすごく高いんだぞ!?」
およ?イフリートが随分慌てている。
「それはわかっていますが、マスターは欲しい施設があれば言うといい、とおっしゃってくださいました。たとえ設置できなくても将来的に設置して下さるかもしれないでしょう?」
「いや、だからっていきなり頼むのはどうかって言う話で...」
「マスターが言ったことなのですからそもそも...」
うーん、言い合いしてるなぁ。まあ、ある意味元凶俺だし、まずは花畑を適当に草原や山、森の中に十ヶ所くらい作っておくか。で?精霊の泉はっと...なるほど、確かに高いね。イフリートが止めようとするわけだ。
まあ、そんなの無視して設置するんだけど。んー?流石に十ヶ所とかはきついからな、まずは三ヶ所ほど水辺と山と森の間、草原の真ん中でいいかな?
さて、設置も終わったしまだ言い合いしてるイフリート達にも知らせるか。
「あー、言い合いしてるとか悪いんだが、イフリート達こっち向いてくれるか?」
「ハァハァハァ、な、何ですか?」
「ハァハァ、な、何でしょう?」
うーん、息切れするほど言い合ってたの?まあ、いいわ。
「花畑は既に十ヶ所設置したし、精霊の泉も三ヶ所だけだけど設置したから確認してきてくるといい」
「「......はぁぁぁぁぁぁぁ!!??」」
お?驚いてくれたか。こう言う時の反応が好きな俺は性格が悪いのだろうか?
俺はそんなことを考えながら、イフリートとドライアドに詰め寄られることとなった。
苦しい苦しい、胸ぐら掴まないでー
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