第13話
「今回はここまでにしましょう」
「おーう...」
ミアに鍛錬の終了を告げられた俺は、訓練場に汗だくで這いつくばっていた。
「汗だくですねセイヤ様。今魔法で綺麗にするので動かないでください」
ミアはそう言うと俺に何かの魔法を使ったようで、俺の体が少し光ると汗がなくなり風呂に入った後のような満足感が俺を包んだ。
「へー、やっぱ魔法ってスゲェな」
「この程度なら少し勉強すれば覚えられますよ。それよりセイヤ様、セイヤ様には長剣はあまり似合わないと思います」
「どゆこと?」
「別に適性がないわけではありませんが、使い慣れていらっしゃらないのでしょう?鍛錬の最中、ちょくちょく違和感を我慢するような素振りを見せていましたし」
まあ、バレるか。俺は鍛錬の間ミアにボコボコにされ骨折したりもした。当然治してもらったけどな。
ただ、それは俺が弱いからだけじゃなく反りのない両刃の剣に慣れていないってのもあった。俺が一番得意な得物は刀で時点で棍や槍だ。理由としては日本古武術を中心的にやっていたせいだろう。お陰で扱いなれていない長剣に苦戦してしまった。
「よくわかったな。その通り、俺は長剣を扱いなれていない。記憶を共有したなら知っているだろうが、俺が得意なのは片刃の反ったサーベルのような剣や棍や槍などの長柄だ。まあ、長剣もそれなりに使えるようになりたいが、戦闘力を伸ばすのならそっちを使った方が伸びやすいだろうな」
「そうでしたか。すみません気づかなくて」
「いや、謝る必要はない。そもそも俺が長剣を出したのが間違いなんだから。最初から刀でも出してたらこんなことにはならなかったよ」
ほんと、俺はこっち来て少し浮かれていたみたいだ。そのぐらい冷静に判断できないとこれから先、生き残れないぞ。
「では次からは、それらの武器を使いましょう。今日はもうおしまいです。お昼を食べて少し休んだら魔法の勉強をしますからね」
「よろしく頼むよ」
まだまだミアには教えてもらうことがたくさんあるからな。今日の昼はチキンやハンバーガーなどのジャンクまみれで虜にしてやろう。グフフフフ
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さて、昼食を食べた俺たちはダンジョンコアがあった部屋...リビングでいいか。リビングでDPを使って出した魔法関係の本を開きながら勉強をしていた。
「ですので、わかりましたね?魔法とは体内の魔力を操作して体外に出し、その魔力を明確なイメージで炎や氷に変換することで発動するのです。より正確には炎や氷を矢や槍などの形に変えられれば攻撃魔法になり、他にもイメージ次第では回復魔法や強化魔法にもなるのです」
「ああ、よくわかったよ」
つまりだ、魔力を操作し火の玉をイメージして魔法を発動させれば、それは『ファイアーボール』になると言うこと。
「やってみてもいいか?魔力操作はDP変換で覚えたから問題なく出来る」
「構いませんが、少し待ってください。セイヤ様の魔力は膨大なので、もし暴走したら大変なことになります」
そーいや俺の魔力化け物なんだっけ。すっかり忘れてたわ。
俺が少し待っているとミアは俺とミア自身、そして部屋の家具や壁などに沿うように半透明な膜を出した。
これは結界か?確かにこれなら安全だ。
「結界かな?どのくらいの強度があるんだ?」
「それほど強くはありませんが、劣龍のブレス程度なら防げるかと」
それって結構強くね?今ホイッて感じで張ってたけどすごいなミア。
「んじゃやるぞー」
「いつでもどうぞ」
それじゃあまずは、魔力を手のひらに貯める。俺は魔力が多いからほんのちょっと、コップ一杯いやそれよりも少ないぐらいの量を貯める。そして、貯めた魔力に明確なイメージを送る。送るイメージは火の玉。火の玉をイメージしながら魔法の発動を強く念じる。
すると...
ボッ!
「うおっ!」
手のひらに野球ボールより少し大きいぐらいの火の玉が出現した。
「ミア!これって成功でいいんだよな!」
年甲斐もなくはしゃいでしまった俺は、子供のようにミアに尋ねた。
「はい、しっかりと出来てますよ」
よっしゃあ!ミアにお墨付きをもらったぜ!そう喜んだのも束の間、ミアの次の言葉でとても冷静になった。
「ただ、やっぱり魔力が多いですね。今にも爆発しそうです。これからは魔力操作を重点的に教えていきましょう」
「えっ!?爆発しそうなの!?どうすりゃいいだ!?」
ミアにそう言われた俺はとても慌てた。
「別にそのままで問題ありませんよ。結界も張ってありますし、セイヤ様が出来るだけ魔力を少なくしようとしたおかげでそれほど強い爆発も起こらないでしょうから」
「いやいや、なんでさんな冷静なの!?どっちにしろ爆発するなら慌てるから!」
普通慌てるやろ!いくら大丈夫でも手のひら爆発とか焦るからな!なんでそんな冷静なんや!
俺がそんなことを思っていると、手のひらの火の玉がいきなり形を保てないように不安定になり、次の瞬間。
バァン!!
「うおう!!」
爆発した。
「私の言った通り大したことなかったでしょう?」
俺が驚いて固まっているとミアがそう言ってきた。
「いや確かに最初思っていたより小規模だったけど、それでもやっぱり心臓に悪いわ」
「そうなんですか?」
「そうなんです」
「なるほど」
うーん、ミアはリンの命令で強い敵と戦ったりしたからか、そこら辺少しズレてるみたいだな。
「はー、とりあえず。爆発させずに魔法を発動できるように魔力操作を教えてくれ」
「わかりました。こちらも戦闘訓練と同じようにビシバシ行きますね」
「お手柔らかに」
こんな感じで戦闘訓練だけでなく魔法訓練においても楽しい鍛錬(地獄)が繰り広げられることとなった。
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