第9話




「よし、上層部はひとまずこれでいいだろう」


 俺は程よい疲労感と達成感に満たされながらそう呟いた。


「完成したのですか?あ、これはお水です。どうぞ」


 ミアが何処から取り出したのかは知らないが、水を入れたコップを乗せたお盆を持ちながら話しかけてきた。


「ああ、ありがとう」


 俺はミアにお礼を言って水を飲み干した。


「それから、完成したか?だったな。ひとまず上層部は完成したぞ?中層と下層は他と違う感じにするから、もう少しじっくりと考えるがな」


「そうなんですか」


「ところでミア、ダンジョンは作ったら問答無用で外と繋がるのか?それから、他のダンジョンだと上層や下層はどんな分類になってるんだ?」


 俺はそう尋ねながら、部屋に何も無いことに気づき椅子や机などをダンジョンマスターの力を使って出し、椅子に座った。


「その事でしたら安心してください。ダンジョンマスターが繋ごうとしなければ外とはつながりません。まあ、あんまりウジウジしてると迷宮神が強制的に繋げますが」


 ミアは椅子に座りながらそう言った。


「それから、他のダンジョンでの一定階層ごとの分類はかなり大雑把ですが、上層中層下層、そして深層で別れてますね。深層まであるのは中堅ダンジョンの中でも上の方かそれよりも上の上位のダンジョンぐらいですが」


 なるほどねー、それ考えたら上層だけでも一つのダンジョンとして完成してそうだな。

 て言うか迷宮神って何?最初のダンジョンマスターかそれを産んだ存在なのか?まあいいや。

 とりあえず強制的に繋げられてもいいように、上層はもう作っておくか。


 俺はそう思い、ホログラムのままだったダンジョンの上層部をダンジョン用の特殊な魔力を使い作成した。


「そーいや、特殊な魔力って他になんか呼び方ないの?いちいち言うの面倒じゃない?」


「そうですね。他のダンジョンマスターなどはダンジョンを操作したりモンスターを出したりするためのポイント、ダンジョンポイントとかって言ってますね。私達もこれからはそう呼びましょうか。明確な数値とかはないですが」


「んじゃダンジョンポイント...DPでいっか、そう呼ぼう。それよりも、明確な数値ってないの?てっきりモンスター召喚とかも数値で表示できると思ってたんだけど」


 驚いた俺は、ついそう聞いた。


「早速ダンジョンを作成したみたいですが、その際に消費するDP量は数値ではなく感覚的にこのぐらいの量という認識でしたでしょう?同じモンスターを召喚したりでもその時その時で少し差があるので、下手に数値化しても混乱するだけなんです。万単位で大雑把に計算してたりはするかもしれませんけど」


「マジかよ」


 ラノベの中だと明確に数字決まってたんだけどなぁ。でも、数字の管理めんどくさいし、俺の魔力を高レートで変換できるって考えたら特に問題はないか。


「それでセイヤ様。今日はもうお休みになっては?自覚していないようですが、上層部を作るのに数時間ずっと集中していましたよ?」


 えっ?そんなに経ってたの?知らへんかったわ。そのことを自覚した途端どっと疲れが出たような気がした。


「あーじゃあ、もう休むか。でもその前にこの空間をもう少しまともに生活できるように改造するよ」


 俺はそう言うと、残ったDPで部屋をいくつか追加した。内装は...ビジネスホテルを真似る感じでいいか、シャワーとかもついてるし。

 あとは、ご飯もだな。ミアもいるしここで食うか。


「ミア、今からご飯だべるけど何がいい?」


「私はなんでもいいですよ?セイヤ様の記憶にある、ろしあんるーれっとの様な罰ゲームで食べるような代物は嫌ですが」


「それなら寿司食うか」


 俺はそう言って机の上に銀座の特上寿司を出した。いやー、日本だったら諭吉が飛ぶほど高いだろうけどDPで出すとめっちゃ安く感じるな。びっくりしたわ。


「生魚ですか、私は食べたことがありませんね。セイヤ様の記憶を見る限りでは美味しそうですけど」


「ミアの感覚はこっち世界寄りなんだな。てっきり知ってるかと思ったけど」


 既にこの世界のことはある程度知っていて、少なくとも生で魚を食べるのは港町や一部の食道楽ぐらいらしいから、ミアの感覚は一般と言えば一般。神の眷属と同列に考えていい存在と考えれば、ちょっと違和感があるがある。


「私はリン様の命で仕事をしてばかりでしたからね。それほど多くのことを知っているわけではないのです。一般常識やリン様に入れられたダンジョン知識は別ですが」


「なるほどね。なら美味いから食べてみ。おっと、醤油はともかく、その緑色のヤツは付けすぎるなよ?」


 こうして、ミアとの食事の時間はゆっくりと過ぎていった。


 ちなみに、ミアに寿司は好評だったようで、ワサビ多めが好きらしい。





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「いやー、この調子ならミアとも上手くやっていけそうだな」


 寿司を食べた俺は、ミアと別れて先に作っておいた部屋に入り、シャワーを浴びてベットに寝転がっている。

 ミアはこの部屋を作る時に一緒に作った他の部屋のどれかにいるだろう。


「いやーダンジョン作ってみて思ったけど、予想通り楽しいな。多種多様なモンスターに環境。他にも色々まだ確認できてない機能もあるみたいだし、明日も楽しみだ」


 これで命のやり取りがなければ最高だったのかもしれないが、ここはそう言う世界だし、それはそれでスリルがあって楽しいって見方もできるからいいか。


「ま、今のところは上手くいきそうだし。今日はもう寝て、明日に備えよう」


 死んであの世に行くしかないと思っていたのに、こうして次のチャンスをくれたリンには感謝しないとな。


 




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