和風ファンタジーというこちらの作品。
確かに和風なのですが、○○風、という括りなどどうでもよくなるくらい、強い世界観を持った作品だという印象を受けました。
「この物語の世界の空気はこんな匂いがして、本はこんな手触りで、食べ物の味はきっとこんな風」などと、読み始めると読み手の中でぐんぐん世界が広がって行きます。
私はそれほど小説を読んで来た方ではありませんが、五感を刺激する作品には多数出会っています。しかし、本作のように、読み手にお話しの世界を広げさせる作品とは初対面。
物凄いパワーだと思います。
作者様の独特なリズム感も相まって、読み手の心はがっちり掴まれることでしょう。
この話は、呪いと共に生まれた鬼族の姫君とふろたきの少女との友情の話です。
一族最強の力を持って生まれながらも、古の呪いを受けて生まれたキキョウ姫。呪いを解くかもしれないうたを知っていたばかりに、姫の世話を任されるふろたきのリュ―リュ。
種族を超えた2人の友情が向かう結末は感涙必死の美しいものです。
世界観も良く作り込まれていて、特に鬼の使う文字と人間の使う文字が分けられていて、それぞれの特性がある所など、またその文字の設定が話に絡んでくる所は特に見事だと思いました。
文章も情緒的で非常に読みやすいです。特に情景描写は一読の価値あり!です。
もしも私が
「感動する異世界ファンタジーを教えて」
と聞かれたら、真っ先に
【ふろたき女と、鬼の姫】
を挙げるでしょう。
それほどまでに心がうち震え、一つ一つのシーンが脳裏に焼き付いています。
プロローグとエピローグを合わせて全十五話。
中編小説くらいの長さなのが信じられない。
それほどまでに濃厚な物語です。
そしてこの作品における一つのテーマへの、物語のアンサー、帰結があまりに見事。
物語の完成度の高さ、完璧と言ってもいい構成に、読了後はしばらく言葉も出ませんでした。
さあ、作者様の圧巻の描写が織りなす美しくも重厚な異世界ファンタジー。
ぜひご覧くださいませ。
完結まで読了。80分程度で一気読みした後、しばらくの間、傑作映画を観たような余韻に浸らせて貰いました。起承転結がしっかりとしたストーリーに加え、読みやすくも硬派な文体が中世東洋風の世界感と良くマッチしています。哀愁系でありながらも、希望ある美しい結末でした。このような作品を書き上げた作者と、本作品を紹介してくれたレビューアーさんに只々感謝申し訳上げます!
追記:レビュー後お布施しようと思ったのですが、出来ませんでした。このような素晴らしい作品を無料で読んでしまって申し訳ないです。是非とも多くの読者にこの感動を味わって貰えれば、と思います。重ねてですが、本作品、ありがとうございました。
この物語は、鬼族の屋敷に勤めるリューリュという娘が、幼馴染の侍シュンゴウに引きずられて奥座敷へ連れていかれるところから始まります。
知らない世界であるにも関わらず、どこか懐かしさを感じさせる世界観。
鬼族と人間の関係。
それらを自然と認識させてくれる冒頭部分で、あっと言う間に物語の中へと誘(いざな)ってくれます。
鬼の姫の身を危ぶませる呪いの力。
彼女を助けたいと願う、ふろたきの娘リューリュ。
それを助ける幼馴染や同僚。
次第に姫である鬼鏡とリューリュは心を通わせていきます。
彼女たちの穏やかな光景を見ながら、読者はいつまでもこのままでと、心から祈りたくなることでしょう。
文章には落ち着きがあり、その表現方法は、独自の世界観をより深めていると感じます。
ぜひとも、この哀しくて温かい物語を体感してみていただきたい。
終盤に明かされる真実を、ぜひその目で見届けていただきたいと思います。
美しい鬼の姫と優しい少女とが織りなす、とても上品なファンタジー。
謎の病に苦しむ鬼の姫を、とあるきっかけでひとの子が救います。病の原因はまさかの「呪い」!?しかも、その「呪い」は一度では済みませんでした。
時代をまたぐ「呪い」の真相とは。果たして彼らは、未然に「呪い」を防ぐことができるのか。すべては一つの「うた」から始まります——。
物腰柔らかな語り口で、しかもお淑やか。けれども、一話一話はどれも煌めいていて臨場感にあふれており、一秒たりとも退屈しません。
惹き込まれる情景・心理描写は一言一句見逃せない、まさしく一気読み注意な作品です。
気怠い体に、疲れた心に、ポッと優しさが欲しい時に。ぜひおすすめな一作です。
とても素敵な物語です。作者さまの感性がみずみずしく物語をいろどり、まるで、月の静寂。
ひそやかな花の息吹。
そういったものを感じられるような、詩的な世界なのです。
といっても、わかりにくい事は全くなく、(私の表現が分かりにくいだけ。)主人公は可愛いひたむきな少女で、応援したくなるし、物語の謎を、ぐんぐん追っていきたくなるし、毎回、エピソードに動きがあって、飽きるという事がありません。
ふろたき、とは正しく風呂焚き。大きなお屋敷のお風呂のお湯を沸かすため、ふいごで火を吹いたりする。そんな下働きにすぎない主人公が、入る事なんてありえない奥の部屋に呼ばれ。
さあ、不思議で美しいおとぎ話のはじまりです!
ぜひ読んでいって下さい!
鬼の姫、僕はこの言葉だけで無限の物語を想い浮かべてしまいます。
ここに新たに生まれた幻想的なセカイ。
本当はレビューを書くのはとても早計かもしれません。この物語の行く末を見て、それから書くのが本来はとても正しい。でも僕は書く。断固書く。何故ならこの新たに生まれたセカイを祝福したいから。
僕は物語には様々なベクトルが存在すると思います。読み手である僕らは、多くの読書経験からテンプレに当てはめつつ、その内容を修正し、物語の理解を深めます。その修正値が大きい物語程、読者の期待を裏切り、独自の世界観を見せつけ、オリジナルキャラクターの魅力を爆発させているのです。
ではこの「ふろたき女と、鬼の姫」はと言うと、和風「幻想」ファンタジーという風に僕は思います。敢えて書きましたが、「幻想」という概念がここには存在します。
これこそが恐らくこの物語のひとつの「核」。全編に漂うその精妙で細やかな柔らかさ、この筆者様でしか味わえない「和風」は、その辺の活字中毒な和風ファンタジーではとても太刀打ち出来ません。
そこに「幻想」という虚空を掴んだ筆者様の感性が、僕らの心を躍らせ、そして途轍もなく謎めいたセカイを垣間見せてくれる、そんな予感が僕はするのです。
これは詩的でノスタルジーなポエミー作品とも違います。しっかりとしたリアルなセカイが存在し、もっとギリギリをよぎる感情の揺らぎも見せてくれるでしょう。
だから、今すぐこの世界に旅立って下さい。
お薦めします。僕らはそういう胸躍る美しい「幻想」に「今」立ち会っているのです。
そして「賢いヒロイン」参加作品として、是非皆様に応援して頂きたいのです。
宜しくお願い致します。