トロイメライ戦記~伝播する悪魔と夢想する天使~
河内三比呂
序章
第1話 夢想の原罪①
硝煙が辺りを包む。
咆哮をあげ、暴れ回る
およそ声と呼べない悲鳴の中、天使を駆る
(あー……だりぃ)
****
朝。
気怠い身体を無理矢理起こし、ベッドからはい出ると、彼は憂鬱そうに洗面台と向き合う。
冷たい水が、気持ちいい。
顔を洗い、すっかりくたびれたタオルで水気を拭う。鏡に映る自身の
ため息を吐くと、彼は肩まで伸ばした黒髪を三つ編みにし、適当に右側に垂らす。
そして、クローゼットに向かい白基調の隊服に着替え始めたところで、すっかり聴きなれた声が備え付けのスピーカーから響いた。
『ユリシーズ・バーレイ准尉、おはようございます。寝起きからまだ時間経過していないようですが、レイン博士がお呼びです。至急、ミーティングルームまで起こしください』
「……了解」
短く答えるのと、着替え終わったのは同時で、深く息を吐きながら彼は自室を後にした。
****
「やあ! ユーリ、待っていたよ! 昨日はよく眠れたかい?」
ミーティングルームに入るなり、白衣をだらしなく着崩した、柔らかそうな水色の襟首までの自身の髪を弄りながら優雅に椅子に座る男の方へ視線をやる。
ユリシーズことユーリも、まだ二十三歳と若い。だが、目の前の男も少ししか歳が変わらないであろうことは判別できた。
その傍らに、桃色の腰まで伸ばした髪に豊満な胸をこれでもなく強調した黒いバニースーツを着たこちらも
その姿にも関わらず、無表情な彼女と男にユーリは思わず呆れたような声を上げた。
「……はぁ、レイン博士殿? エッダで
そう冷静に告げると、レインは不貞腐れた顔をしながら答えた。
「つれないなぁ……。単に、今日はワタシがエッダちゃんをそうしたい気分だったんだから、仕方ないだろう? それになにより似合っている! さすが、ワタシの
もはや、最後は自慢だ。この
「……で? 俺の今回の任務はなんだよ?」
「ああ! それだそれ!
「それで? 場所は?」
ポンッと両手を軽く合わせると、レインが相変わらず読めない笑顔で答えた。
「極東の国、日本さ!」
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