第19話 夢想の福音③

 ユーリとハリスの機体が指定ポイントに着くまで、時間差はどうしても起こる。

 走っている間にも、瓦礫や破片が飛んでくる。


「ユーリ、次はこっち方面に走ります!」


(ハリス隊長……アンタ何者なんだ……? これじゃあまるでじゃねぇか!)

 

 困惑を隠せないながらも、ハリスの指示通りに走る。この状況だと言うのに、彼の指示の方向に動けば飛んでくる全てから回避できている。


「もうすぐポイントです! 機体に乗りますよ!」


「あ、ああ!」

 

 向かえば、二人の機体……エルプズュンデとエヴァンゲリウムが既に指定ポイントに着地し、待機していた。

 腕に装着しているコンソールでコマンドを入力し、ワイヤーアンカーを射出してハッチへ接続し、そのまま勢いよく移動する。


(くっ! やっぱり、慣れない。この乗り方……!)


 愚痴っている場合ではないと自分を落ち着かせながら機体に乗り込む。

 パイロットスーツではないため、いつもよりも重力制御装置の数値を上げる。

 そして、ユーリはエルプズュンデをブースターを噴かせて勢いよく加速して行く。

 その背後を、銃剣を手にしたエヴァンゲリウムが援護する。


『ユーリ、ロディ達が苦戦しているようです!』


「……承知した!」


 走っている時から存在感を放っていたカタストロイだが、近づけば近づくほどにその圧をひしひしと感じる。

 その中で、ロディが銃鎌を振り回し、アイクとシャオの機体が持つフライハイト・クロイツで援護をしていた。


『ユーリと隊長か! コイツ、かなり手強いぞ!』


 ロディから通信が入る。緊迫した声色が、どれだけ苦戦しているのかを表していた。

 ユーリがエルプズュンデのアクセルを踏み込む。

 更に加速し、ゲベート・ナーゲルで視認できる範囲の中、もろそうだと判断した場所を狙って穿うがつ。

 だが……。


「くっ!? 穿ちきれないか!?」


 硬い。

 今までの、ハイ化したカタストロイ達……つまりは元人間だった彼らより、遥かに硬い。


(これほどまでに、違うってのかよ……!)


 の脅威に、改めて危機感を覚えながらユーリは敵であるカタストロイの身体から無尽蔵に放たれる光線をかわす。

 この光線には法則性が見当たらない。

 だからこそ、予測が立てられず苦戦しているのだと理解した。


(理解したからって……退く理由にはなんねぇんだがな……!)


 全員と合流したユーリは、ゲベート・ナーゲルを構え直す。

 その時だった。

 ハリスから全員宛てに通信が入った。


『皆さん、体感していると思いますがかなり手強いです! なので……を行います! アイクとシャオはシールドの形成を! ロディとユーリは……体勢に入ってください!』


 全員に更なる緊張が走る。今まで、訓練では成功してきたが……実戦では行って来なかったからだ。

 そう……。

 ハリスの乗るエヴァンゲリウム、ロディの乗るキルヒェンリート、ユーリの乗るエルプズュンデ……この三機の合体を――。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る