第11話 夢想の讃美歌②

 動き出したのは水色の疑似怪獣ハイ・カタストロイだった。

 全身を震わせて、氷の刃を一気に放出させる。

 その攻撃を、シャオの駆るヴュルク・エンゲルがフライハイト・クロイツの長身の方を展開させ、数十個は撃ち落とせた。

 だが、まだまだ数が飛んでくる。

 ユーリは腰のホルダーから拳銃・リートゥス・ピストーレを取り出し、迎撃する。


「射撃はあまり得意じゃないんだがな……!」


 愚痴を吐きながらも確実に狙い落していくユーリだが、それでも限界はある。


『ユーリ、お前は風の奴を! 氷の奴は私が対応する! シャオは全体的に援護に回れ!』


「了解した」


 短く答えるとユーリはエルプズュンデを方向転換させ、銀色の疑似怪獣へと向かって行く。

 それを確認すると、ロディは自身の駆るキルヒェンリートの銃鎌の砲身からビームを放つ。

 さらに上乗せで、瞬時に砲身の特製実弾を撃ちこんだ。


 一方のユーリは、エルプズュンデを加速させ銀色の疑似怪獣に向かって行く。地形を生かし、あえて軌道を変則的にしながら速度を上げる。

 銀色の疑似怪獣は、エルプズュンデの動きに合わせるように口を開いたまま動かしていく。

 だが、エルプズュンデの速度を完全に捉えることは、流石にできなかったらしい。

 

「捕捉完了。今度こそ……撃ち抜く……!」


 ゲベート・ナーゲルを銀色の疑似怪獣の横腹を狙い、穿うがつ。

 途端、青色の液体が穴の開いた箇所からあふれ出した。


(よし……)


 油断できる状況ではないが、少なくとも戦況を変える一手には確実になったということだけは認識できた。

 ユーリは素早く操作し、認証コードを入力する。

 

「座標指定完了。認証コード、トロイメライ。コール、クロイツ・クリンゲ」

 

 クロイツ・クリンゲの到着まではラグがある。故に、時間を稼ぐ意味も含めて容赦なくゲベート・ナーゲルで撃ち込んで行く。


 その背後では、ロディが器用に銃鎌ゲベート・ゲヴェーアヒッペで水色の疑似怪獣の氷の刃を払い退けながら、接近していた。


「決めさせてもらう……モードチェンジ、タイプD!」


 ロディが鎌部分で一気に水色の疑似怪獣の頭部を斬り裂いた。青い液が溢れ出す。

 それを認識したのか、エルプズュンデの猛攻を受けていた銀色の疑似怪獣が咆哮をあげた。

 そして……纏っていた風ごと宙へ浮いて行った。


『なぁー!? ロディ! ユーリ! どうする~!?』


 シャオの困惑した声が通信越しに響いて来る。それに答えたのはロディだ。彼女は相変わらずの口調で、静かに指令を出した。


『当然……迎撃だ。二人とも備えろ!』

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