第12話 夢想の讃美歌③

 宙に浮いた銀色の疑似怪獣ハイ・カタストロイは器用に回転しながら、口を最大限まで開けた。

 今までとは比べ物にならない程の吸引力。

 重量があるはずの機体が浮きそうになる。

 姿勢をなんとかキープしつつ、ロディの指示を待つ。


『ユーリ』


「なんだ? 早く指示してくれ!」


 踏ん張り続けるのにも限界がある。だからこそ、彼女の言葉は衝撃だった。


『浮力に任せて加速し、奴を穿うがて』


「……はぁ!?」


 思わず大きく声を張りあげるユーリだったが、その意図を理解した。


「ちっ! やってはみるが……後ろは頼んだぞ?」


 言い終わると同時にユーリは、真上に向かってブースターで一気に加速していく。めがけるは……標的の口そのもの。


「……穿ってやるとも! 、貫けぇぇぇぇ!!」


 そのまま銀色の疑似怪獣の口の中へ突入していく。生物でありながら機械のような外観と違わない内部を直進すると、先程の座標指定で呼び出したクロイツ・クリンゲがすれ違うように銀色の疑似怪獣を貫いた。

 それを認識すると、ユーリはクロイツ・クリンゲに続くように姿勢維持装置を操作し、器用にゆっくりと落下していく。

 クロイツ・クリンゲの近くに着地したユーリが周囲を見れば、水色の疑似怪獣をシャオの乗るヴュルク・エンゲルがフライハイト・クロイツで砲撃し、ロディがキルヒェンリートの持つゲベート・ゲヴェーアヒッペの鎌部分で斬り裂いていた。


(ふう……終わったか……)


 ユーリが息を吐いてすぐに、通信が入る。任務完了の合図だ。それからまもなく、洗浄班が到着した。

 洗浄が終わるまで手持ち無沙汰なユーリは、静かに目を閉じる。脳裏によぎるのは……ハリスの言葉だ。


(なぜハリス隊長はこのことを予見できたんだ? いや、そもそもこいつらはなぜあの少女を? ……気に入らないな、この状況……)


 その時、ハリスから通信が入った。あまりのタイミングにユーリは思わず驚くとともにこれが通信で良かったと思い直した。


『三人とも、お疲れ様でした。洗浄が終わり次第、各自休憩を取ってください。頃合いをみて、ミーティングルームに召集をかけますのでよろしくお願いしますね?』


 それだけ告げると、ハリスからの通信は途絶えた。


(一方的だな。まぁいつものこと……ではあるっちゃあるが……)


『なぁー? ロディ、ユーリ。あのミナレって子さぁ、どうなってるんだろうな~?』


 シャオのあどけなくも心配している声が通信越しに響く。それに対し返答したのは、ロディだった。


『それはこちらから判断できんな。今は洗浄が終わるのと休憩することだけを考えろ。いずれにせよ、ミーティングルームに召集がかかればわかることだろうしな』


 ロディの冷静な言葉で静かになるシャオ。そのやり取りを聞き流しつつ、ユーリは出撃前と同様、本に手を伸ばすのであった。

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