第2話 夢想の原罪②

 ソロモン諸島近海から突如現れ、世界を蹂躙じゅうりんし始めた怪物達……明らかにからの侵略者につけられた名、それが大災害の悪魔カタストローフェ・トイフェル略してカタストロイだ。

 彼らと戦うために設立された特殊部隊、トロイメライ戦隊。

 ユーリの所属する部隊の名であり、世界を守るため最前線を張る精鋭達の名である。


 ……なのだが。


「相変わらず、冴えない顔してますね? こっちまで気分が下降するのでやめてもらえます? 自分、日本に来るのは初めてなんで? 風情……あー日本語だと『わびさび』だとかなんとか? を味わいたいんで?」


 目の前で不満を垂れまくる同い歳の、褐色肌の青年にユーリは思わず頭痛がしそうだった。

 切りそろえられた藍色の髪と青い瞳に甘いマスク。ここまでならモテそうなのに、口を開けば毒を吐く彼、アイザック・アーヴァインがユーリはものすごく苦手なのだ。


 (ちきしょう……レイン博士め……ぜってぇ面白がってこの人選にしたな!?)


 内心で恨みごとを吐きながら、彼の方へ視線をやる。


「なんです、先輩。なにか用でもない限り見ないでもらえます? そっちの趣味ないんで」


「俺だってねーつっの! はぁ、んなことより……M.E.の状態は万全なんだろうな? データで観てるとはいえ、現地に赴くのは初めてなんだ。ぬかるなよ?」


 そう釘を刺せば、彼は大きく伸びをしながら答える。


「ふあぁ……当然です。とはいえ、侮れば命取り……なんて幼子でもわかることですよ? 先輩?」


「……あのな、? お前本当に、減らず口だな?」


 そうユーリが苦言を呈した時だった。のスピーカーから声が響く。


 『ユリシーズ・バーレイ准尉、アイザック・アーヴァイン准尉。そろそろ日本国、空港に到着いたします。準備を』


「はいはい、わかってますよエッダ?」


 声の主、エッダに対しても嫌味を言うアイクにユーリは、もはや呆れを通りこし諦めることにした。


「で? エッダ、俺達が潜る場所ってのは……高等学校ハイスクールであってんだよな?」


 話題を切り替えれば、反応はすぐにスピーカーから返って来た。


『はい、日本の首都にある都立鈴鳴すずなり高校という日本独自の教育システムに則った平均的な学校ですね。ここにはすでにハリストフォル・ハクルート大尉が、教育実習生という名目で潜入済みです』


 ハリストフォル・ハクルート。自分達の上官であり……トロイメライ戦隊の隊長の名を聞き、ユーリが少し困惑した表情になり、離れて座っていたアイクが不思議そうに尋ねる。


「ハリス隊長が潜入しているなら、自分いらなくないです? あの人ってレイン博士へんたいと肩並べるくらいの大物じゃないですか。


(……俺もいれんのかよ……あーだりぃ……)


 ユーリがそう思っている最中、先程まで聴こえていたエッダのものとは違う若い男性の声がスピーカーから響いてきた。


『あまり卑下してしまうのは悪い癖ですよ、アイク? 貴方達を呼んだのは僕一人での対処が難しいと判断したからです。とても頼りにしているんですからね? 仲間としても、としても、ね?』

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