第17話 夢想の福音①

 トロイメライ戦隊が北米軍基地に来て、一週間後。

 

「それで? 隊長殿、の調査結果はこれですが……これからどうなさるおつもりで?」


 アイクが尋ねれば、ハリスがいつもより更に穏やかな口調で返した。


「そうですね、アイク達が集めてくれた情報を元に、エッダちゃんに解析をさせました。その結果、二人の人物にアウスの疑惑が浮上しました」


「二人だと? それは、どちらの意味でだ? 二人の内一人がハイ化するほどのアウスなのか? それとも……」


 ロディの言葉を途中で遮ったのは、通信越しのレインだった。


『両方がアウスで、ハイ化する可能性の方だよ~!』

 

(いつも思うが……どこから聴いているんだ? この博士へんたいは)


 ユーリが口にこそ出さなかった思いは、の者達との共通認識だったようだ。シャオが不思議そうな顔で口を開く。


「レイン博士は、どこからいつも話を聞いているんだ~? おれ、不思議だぞ!」


『あはは! それは秘密さ~!』


 レインがあっさりと告げ、話を戻す。


『それで、両方がって話なんだけどね? どうも思った以上に、複雑な事になっているようでね?』


「複雑? どういう意味です?」


 アイクが口を挟めば、ハリスから返事が来た。


「それはですね……その二人が、ということです」


 ****


 北米軍基地内。

 国連主体の組織に属しているこの軍内にも、あらゆる部隊がある。

 その中の一つに、カタストロイ対策部隊というものが存在する。

 対策部隊が存在するのは、トロイメライ戦隊が少数故に、対応が間に合わないケースを想定してのことだ。

 もっとも……今までとそのケースがあったことはないが。


(そんな部隊から、アウスの反応が二つ……ねぇ?)


 先を歩くハリスをに視線をやりつつ、ユーリは思考を巡らせる。


(アルプ機関が観測しているのは確かだし、アイク達も抜かっていたわけではない。だが、ここまで絞るにしては。どういう……事だ?)


 疑問は尽きない。だが、それに答えてくれる自信がない。


(そんなに……信頼関係ねぇんだよ……は……)


 ふと、視線が交わる。気づけば、ハリスが振り返ってユーリに微笑んでいた。気まずくて目を逸らすと、ハリスが宣言した。


「大丈夫ですよ、僕達はこれからなんです。きっと福音が……訪れますよ」


「それは……ハリス隊長の機体にかけてのことか? それとも、他に何かあってのことか?」


 ユーリが少し勇気を出して突っ込んでみると、ハリスが静かに答えた。


「そうですね…………と言っておきましょうか」


 含んだ言葉。

 それが引っかかったものの……追求できなかった。

 目的の二人、コールフィールド姉妹を見つけたからだ――。

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