転生したらゲームみたいな世界だった件

ゲームみたいな世界に転移した。いわゆる中世ファンタジー世界ではなく、どこか知らない外国だと言われたら信じるくらいには元の世界と似ていたのだけど、どうしてゲームみたいだと思ったかというとステータスを見ることができたから。

たとえばHPみたいな数字があって、生活していると少しずつ減っていくけど、食事や睡眠で回復する。幸いにして初期状態でお金を持っていたので生活に不自由することはなかった。このお金もステータスに表示される。現金ではなく個人に紐づけられた口座みたいなのにお金が入っているようで、カードなども無いのに買い物ができる。指定の場所に手を置いたりしてるので、おそらく生体認証なんだろうと思うけどよくはわかってない。


ステータスの数字を書き換えられることに気が付いたのは、ちょっと高いものが欲しいと思った時。ステータスの所持金額の数字を眺めながら、もう少し沢山あればと思ったら、なぜか数字が増えた。増えたお金は、特に問題なく使えた。

所持金だけでなく、HPの数字も書き換えることができた。食事をしないでも、ステータスの画面を見ながら思っただけで、数字が回復する。食事や睡眠なしでもいいわけだ。とは言っても、おいしい食事をする楽しみは捨てがたく、時々は食事をしていたのだけど、これも不要になった。


食べ物を食べたりして満足感を得ると、対応するステータスの数字がアップするのだけど、この数字を書き換えると、食事をしないでも同じような満足感を得ることができた。それどころか、増やす数字を多くすることで、これまで食べたこともない美味しいものを食べたかのような、すごい満足感を得ることができた。

食事だけでなく、他の快楽についても、ステータスの数字で対応できることがわかった。酒池肉林も簡単だ。ちなみに酒池肉林の肉は、肉欲の肉のことだと説明されることが多いけど、本来は食べる肉を林のようにしたものらしい。ただ、その肉の林に、裸の女を走り回らせたりしていたと続いてるそうだ。しかしそんな面倒なことをしないでも、数字をちょっといじくるだけで、それ以上の満足が得られる。


しばらくは部屋に閉じこもって、ステータスの数字をいじって快楽をむさぼっていたのだけど、これはちょっとまずいのではと思った。昔読んだSFで、脳の快楽を感じる部分に電気を流しつづけて、衰弱してしまうというのを思い出したからだ。

でも、HPの数字も書き換えられるのだから、衰弱する心配はなかった。ただ、自分を客観的にみると、何というかゲーム中毒みたいだなと思ってしまった。でも、この世界がゲームみたいなのだから、これが現実だ。


多少は社会に貢献しようと思って、お金をばらまいてみたりもした。最初の頃は自分のステータスで増やしたお金を、欲しい人に送金してたのだけど、何と他の人のステータス上の所持金も増やせることがわかった。試してみたら、他の数字も変えることができた。死にかけている人のHPを増やしたら、元気になった。もしかしたらHPを0にしたら死ぬのではと考えたけど、これはやったことがない。

無造作にお金を配ったり、病気の人を直したりしてたことで、怪しい人に目を付けられたこともあったのだけど、たとえばどんな悪人だって対応するスタータスの数字を書き換えたら善人に早変わりするので、危険なことは無かった。周囲の人の自分への好意度や関心の数値を下げるようにしたら、あまり注目されることもなくなった。


その後はあまり変わりも無く、幸せに暮らしているのだけど、時々ゲームでインチキをしてるような気持になったりもする。そんなときは、対応するステータスの数値を書き換える。




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