スキルの謎(前編)
魔法やスキルのある世界に転生して思ったのは、いったいどういう原理なのかということだ。
この世界だけしか知らなかったら、あたりまえのように存在するものなのだけど、魔法やスキルがない前世の経験があったので違いについて事あるごとに考えていた。
魔法やその元になる魔力については、ある程度わかってきた。
地火風水や光と闇といった魔法の分類は、物質に働きかける形式の違いだ。地火風水の基本魔法は物質を構成する分子に働く力と言う点で共通している。
火の魔法は、分子の熱エネルギーを増加させる。方向性が与えられない力が分子のランダムな運動を増加させて、結果として熱が発生する。発生する熱が大きいと、炎のように外部に光を放出する。
風と水と土の魔法はどれも分子の運動エネルギーに関係している。分子に方向性のある力を与えると、与えた力に応じて動かすことができる。対象物が気体の場合は風魔法、液体だと水魔法、固体なら土魔法というように分かれる。
対象物によって魔法が異なることについては、たとえば風を起こすプロペラと、船を進ませるスクリューの原理は同じでも適切な大きさや動かし方が異なるのと似たようなものだと考えると理解しやすいかもしれない。
風水土の魔法は、物質の三態にそれぞれ対応しているので、この3つを基本魔法として、火魔法は属性を持たない無属性に分類する説もある。(三大魔法説)
これに対し、炎などを物質の4番目の状態であるとして火魔法がこれに対応するという説も出ている。(プラズマ説、4大魔法説)
地火風水の基本魔法が物質に働くものであるのに対し、光と闇の魔法はエネルギーに対して働くという大きな違いがある。
光の魔法は火の魔法と混同されやすいが、火の魔法は空気など何らかの物質が必要であるが光の魔法は真空でも行使できる。光魔法の基礎試験で、真空容器内での光球の作成があるのはこれが理由になる。
物が何も存在しない真空で光が発生することについては、まず光についての説明が必要になる。光とは、熱や魔力のようなエネルギーの一種であり、磁石の力と電気の力をまとめた電磁統一理論によれば電磁的な力であり熱と同じものである。
光魔法は、この電磁的な力に作用することで光を発生させていると考えられる。
闇魔法は光を発生させるのではなく消失させるので、光魔法と作用の方向は逆になる。光は電磁力で作られた波であるとすると、逆向きの波によって打ち消すのが闇魔法となる。光が波であるという光波説は、粒であるという光粒子説とは対立している。前世の記憶をもとに、波と粒子の両方の性質を持つという光両子説というのを提案したことがあるのだが、両派からの批判を受けてしまった。
魔法については以上のようにおおよそではあるが、その原理に付いてわかってきている。その成果として、火魔法の応用で強力な光を発生させる魔法の開発にも成功した。熱になる前の段階で止めて励起させた分子が一度に遷移するときに光を発生させるもので、前世の記憶からレーザーと名付けた。
さて、魔法についてはいいとして、問題はスキルだ。これはどういう原理によるものなのだろう。
(後編に続く)
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