第15話 ~ 警 戒 ~

    ~警戒~

 その夜から僕たちは交代でキーウェの小屋の警備をすることにした。

 まずはエレーナとアルがコンビで警備に着くとこになったのだけど・・

「えぇ~、アルはユウトと警備がしたいよ~」

「なんで、そんなわがまま言うの? あんたがユウトと一緒になんて警備に集中できないの目に見えてるわッ! ダメよっ!!」

 タミーがアルの勝手な態度を責めたけど、アルはそれにもめげず僕と警備をしたいと頑強に主張してきて、その結果・・

「やった~! ユウトと警備!!楽しそう~っ!」

 結局アルの希望通り僕とアルのコンビで先に警備に着くことになった。

「アル、真面目に警備しないとダメだよ、分かってる?」

「分かってるよユウト、今夜は月がキレイだね・・」

「ゼンゼン分かってないよ・・」

 警備というよりデート気分のアルに呆れたけど、しっかり警備しなくちゃと気を引き締めて僕は警備に入った。


 今夜はアルの言ったとおり月がキレイだ、真っ暗な夜より気分的には楽な気がするけど、僕はアルやエレーナ・タミーでは感じることができない邪魂の発する妖気というかオーラみたいなモノを察知する能力を持っているらしい、だからもし月灯りがが無くて真っ暗でも邪魂がいれば僕にはすぐに分かる、この能力を持っているのは、僕のように人間界で意識不明の状態になってる魂だけで、まぁ一種の幽体離脱状態の魂って言えるかもしれないかな?

 まぁそのために僕はこっちの世界に呼ばれたようだ。

 そんな感じでアルと警備についてキーウェの小屋の周りを見まわったりしてる。

 アルはキャットピープルだから夜目は効くようで、真っ暗な中でもかなり遠くのモノも識別できるようだ、今夜は月灯りああるので更に良く見えてるはずだ。

「ユウト、あのずっと先のほうに動いてるの何かな?」

「ん? どこ?」

「あれだよ、う~んと、向こうの木の右あたり」

「良く見えないな・・近づいてくる感じ?」

「近づいてはいないよ、うろうろしてるだけっぽい」

「それじゃあ、野生の動物かなにかだろ、でも、しばらく注意してくれるかな?」

「は~い! ユウトの命令ならなんでも聞いちゃうよ! ウフッ」

「いや、真面目にやってくれよアル」

「は~い」

 この不真面目に見える態度が無ければすごくいい娘なんだけどなぁ・・

 でもいつもそんな適当な返事をするアルだけど、実際にはしっかり役目を果たしてくれるいい娘でもある、だからエレーナもこのパーティの仲間に入れたんだと思う。

 アルと警戒してるとエレーナが来た。

「あれ、エレーナ、まだ交代には早い気がするけど・・」

「えぇ、少し早いですが交代しますよ」

「そう、でもエレーナだけじゃ危険だよ、僕はこのままここにいるよ、アル交代しなよ」

「えぇ~、もっとユウトと警備していたいよ~」

 またアルが子供みたいにダダをこね始めた。

「では、3人で警備しましょう」

「3人でぇ~? まぁいいか」

 やっぱりエレーナはスゴイ、大人の対応をしっかり身に付けてる感じ。

 それからは僕とエレーナ・アルで警備をすることになった。

「そういえばアル、さっきのずっと先に見えた動くものはどうしてる?」

「あぁ、あれはまだあそこにいるよ、ちょっと前から二つに増えてる」

「増えてる? マジ? それちょっと危険かもだよね」

 それを聞いたエレーナがアルの言うずっと先の木がある方向を見てる、

「エレーナ、なにか見える?」

 僕はエレーナに何か見えるか聞くとともに、双眼鏡を使うために異界収納を開こうとすると、僕より早くエレーナが神術を使って、

「ここからではちょっと分かりませんね、遠視神術で見てみましょう」

 と言ってエレーナは僕たちの前に神術のサークルを浮かび上がらせ、そこにアルの言う動くモノを映し出した。

「今回の神術は無詠唱で出したね」

「えぇ、私だって詠唱したくない気分の時くらいありますよ、フフ」

 そう言いながらエレーナは笑みを浮かべてる。

 詠唱したくない気分もあるとは、巫神エレーナにも人らしい感情あるということが分かって少し安心した。

 そこにタミーも出てきて。

「なにかあったのかしら?」

「いや、アルがあの遠くのほうに動くものを見つけたんだ、それでいまエレーナの神術で見てるんだよ」

 4人で遠視サークルに映し出されてるモノを見ながら。

「二匹いるようですね」

「うん、動きから動物みたいだけど」

「たぶん、野生種のキーウェかフォッカスだね」

「フォッカス?」

「そう、キーウェに近い動物、キーウェよりスマートで、その肉は油が乗ってて美味しんだよ~、へへへ」

「フォッカスの肉は美味だから、ユウトも一度は食べてみて、私がおすすめするわよ、フフフ」

「アルとタミーのおすすめなら、機会があればぜひ食べてみたいね」

 そうして4人でフォッカスと思われる生き物を監視してると、しばらくしてその生き物は森の中へと消えた。

 生き物がいなくなったのでエレーナは神術を解いて僕とアルに警備を交代して休むように言ってくれたので、僕とアルは家に入り休むことにした。

「じゃあ、また時間がきたら交代するから、あとよろしく」

「はい、ゆっくり休んで下さい」

 僕とアルは家に入ってベッドで仮眠をとった。


 エレーナとタミーが警備を始めたあとも、とくに気になることは起こらず、警備交代のときがきて、僕とアルが再び警備に付いた。

 今度はエレーナが防壁神術を使って老人の家とキーウェの小屋をまとめてバリアに包んでくれたので、最初と比べて防御的には数段強力なモノになったといえる。

 僕とアルが警備に付くとエレーナとタミーは仮眠をとるため家に入っていった。

「ユウト、なにか面白いこと聞かせてよ」

「面白いことって、何が面白いのか分からないよ」

 防壁神術で守られているし、特に変化も無い感じだし、アルは暇そうで僕に寄り添ってきた。

「なんでもいいよ、ユウトが話してくれればアルはなんでも聞きたいの」

「変なヤツだ・・う~ん、面白いことかぁ・・」

 急に面白い話と言われても、なかなか浮かぶものではない。

 それからしばらく僕はアルに人間界であったことをいくつか話して聞かせた、するといつのまにかアルは僕の肩に寄りかかって眠ってしまっていた。

「アル? あれ? なんだ寝ちゃったのか、警戒しなきゃいけないのに呑気だな」

 いつも思うことだけど、アルの寝顔ってホント可愛い、キャットピープルとはいえこんな可愛いい妹がいたらなぁと思ったりしちゃう可愛さだ。 そんなことを思いながら、僕はアルの頭をそ~っと撫でてやった・・


 それから何度か警備を交代してると徐々に夜が明けてきた。

「おはようエレーナ、明るくなってきたよ、昨日は何もなくてよかったね」

「おはようございます、私たちがずっと警備してたので邪魂も手が出せなかったのかもしれないですね」

「エレーナ、ユウト、おはよう、気持ちのいい朝ね」

「おはよう・・フ~ワァ」

 僕とエレーナが朝の挨拶をしてると、そこへアルとタミーも起きてきた。

 アルは大きなあくびをして、まだ眠そうな顔だ。

「4人で警備した効果があったようで昨日は邪魂らしきモノは現れなかったようです、良かったですね」

  長い夜だった・・



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