第4話 ~移動~
あたりが朝の陽に照らされ、明るく輝いてる、気持ちのいい朝だ。
久しぶりに宿で一晩過ごしたので、ぐっすり眠れた。
そんな朝だけど、僕は真っ先に異空収納をチェックした。
そろそろ新しいグッズがこっちにくるタイミングなはずなんだ。
異空収納っていうのは、術の一種でいろいろなモノを収納して置くことのできる便利な別次元的空間で、僕はエレーナから術をもらって使うようになれた。
「異空収納、オープン!」
僕は適当に設定した言葉を唱えて、目の前で両腕を左右に拡げるしぐさをして異空収納を開いた。
収納を開くとそこにいままでに入手した人間界のグッズが見える、その中に新しいモノがあるかチェック。
「う~ん、今朝は新しいモノは増えてないなぁ・・・」
新しいものがあると、たいがいは一番前に収まってるので見つけやすい。
「ユウト、私にも見せて」
タミーが興味津々な顔でそう言いながら僕が開いた異空収納を覗いた。
僕の異空収納にあるモノはタミーやアルには始めて見るものばかりだから、こんなときはいつもいろいろ質問責めになって少々困りものだけど、可愛い女子にドヤ顔できるのってあんまりないからちょっとだけだけど気分がイイ。
今朝もタミーからいろいろ聞きまくられて僕は少々自慢気に説明してみせていた。
そこへみんなより早く起きて、出発の手続きを済ませたエレーナが部屋に戻ってきた。
「ユウト、タミー、おはようございます」
「おはようエレーナ」
「エレーナ、おはよう、相変わらず早いわね」
「あら、アルはまだ夢の中でしょうか、そろそろ起きてもらわないと」
「アル? アル? もう朝ですよ、起きて下さい」
ベッドのほうへ行くとアルはまだ夢の中を気持ちよく泳いでるって感じで、スゥスゥとカワイイ寝息を立てながら、
「う~ん、もうちょっと寝かせて・・・ムニャムニャ・・」
と寝言なのかちゃんと喋ってるのか分からない反応。
「あらら、ぜんぜん起きないね」
起きないアルを見ながらタミーがなにやら考えると、
「いいアイデアがあるわ、これならアルも一発で起きるわよ、ウフフ」
そう言ってアルを見ながら、
「それでは・・」
「いいアイデア?」
タミーは寝てるアルの耳元に近づいて、
「あっ、メッチャイケメンが見えるわっ!!」
「何それ? イケメンなんて見えないけど?・・・」
僕はタミーの言葉に訳が分からなかった、だけどアルは・・
バサッ! (アルが飛び起きて布団を飛ばした音)
「どこっ? どこっ?」
と言いながら、一瞬でベッドから飛び起きた。
「おはようア~ル」
タミーはニコニコ顔でアルにおはようって挨拶してる。
「う~ん? あっ! タミー、騙したなぁ~」
イケメン好きなアルの習性を知り尽くしたタミーの策略だったようだ。
騙されたと知ったアルはフトンを頭から被ってふてくれてた。
「さぁ、アルも起きて支度してください」
エレーナから起きるよう言われてやっとアルもベッドから起き上がり、ご機嫌ななめなようだけど、なんとかブツブツ言いながらも支度を始めた。
僕たちは朝食を済ませて宿を出た。
「エレーナ、宿代大丈夫だったの?」
僕は宿の宿泊費が気になって仕方ない。
「まだそんなこと言ってる! もうチェックアウトしたんだからイイじゃない!!」
変な方法で無理やり起こされたアルがメチャ機嫌悪そうに僕に食いついてきた。
「さぁ今日もお仕事にありつけるよう願ってくださいね、皆さん」
「はい、お仕事あるとイイわね」
朝からタミーはニコニコ上機嫌みたい。
僕たちは隣の町を目指して歩き始めた。
この世界の町は隣の町とかなり離れてるのが普通らしい、移動はとうぜん徒歩が基本、まぁ術や魔法的なモノを使うという手もあるけど、僕たちのパーティはエレーナの考えで歩いて移動することがほとんど、その距離は近いときで半日歩いたくらいの距離、遠いときだと3日くらい歩かないと着かないようなときもある。
そしてそれぞれの町は囲いで囲ってあることもある、その理由は山賊や野党の襲撃への防御や、それぞれの町の特色を守るためらしい。
僕たちは町から町への移動中、そんな山賊や野党などの襲撃も警戒しないといけないんだけど、そのほとんどはアルとタミーだけで蹴散らしてしまってる。
アルとタミーは女子だけど心強い頼れる仲間って感じ。
今日も町を出ると一気に何もなくなり家すら一軒もなくなる、森の中を進んだり、川を超えたり、丘があったりはするけど、人気というものはない・・
「エレーナ、今向かってるのは何て町?」
「今向かおうとしてるのはトレンスという町です、静かな落ち着いた町で、ここから二日ほどの距離ですね」
「トレンスには美味しいものあるかなぁ?へへへ」
「アルは食い気ばっかりだね」
僕がそう言うとアルは顔を真っ赤にして、
「そっ、そんなことないよっ! アルだって女の子だし、恋とかにも興味くらいあるよっ!」プンプン!!
「まぁまぁ二人とも、美味しいもの食べて恋もして、そんな楽しい毎日を送れるように頑張りましょうよ、フフフ」
タミーは呆れたように僕たちを見ながらそう言って笑った。
しばらく歩いていると林に入った。
「木陰って気持ちいいね」
「木漏れ日がキラキラして美しいわ」
「綺麗だけど日焼けには注意しないとネ」
そんな呑気なことを言ってる僕たちを横目にエレーナだけやや緊張してるようだった。
「エレーナ、どうかした?」
「えぇ、この林に入ったときから誰かに見られてる気がするのです」
「誰かにって、誰に?」
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