第1話


「メロウ」

名前を呼ばれた少年は顔を上げた。その視線の先にいた父親は穏やかに微笑んで、少年を手招く。

「おいで、帰るよ」

「うん!」

父は猟師だ。戦利品の鳥を腰につけて、小柄の猪を布に包んで背負っている。今日はいつもと比べて獲物が多い。新鮮な肉が食べられる。メロウはその姿に、気分が上昇した。

「パパ、今日は大量だね」

「うん、ママも喜ぶぞ」

「お腹の赤ちゃんも?」

「そうだな。しっかりと栄養をあげられるように、ママに美味しいご飯をつくってあげよう。もちろん、お前にもな」

「やったあ!」

素直に喜ぶメロウの頭を、父はくしゃりと撫でた。



メロウは猟師のカザスの息子だ。今年の誕生日を迎えれば12歳になる。体が小さいため自分で銃を持ったことはなかったが、父親の仕事の手伝いをし、いつかは自分も狩りを行うのだと思っていた。今日も、遊びがてら修行がてらに、狩りに着いてきていた。

「思ったより、遅くなってしまった……」

「パパ、雨が降りそうだよ」

「うん。まずいな……向こうの雲が怪しい」

カザスは向こうの空を指差して呟いた。灰色の嫌な雲だ。家まで歩いて1時間半くらいはかかる。その前にきっと、雨は待ちきれずに降ってくるだろう。

「少し早歩きで帰ろうか」

しばらく歩いていたが、焦ったせいか道を一本間違えてしまったらしい。目印につけていたリボンがない。

「悪い、メロウ。道を間違えたようだ。先ほどの目印の場所まで戻るぞ」

「うん………パパ、あっ」

慌ててカザスに着いていこうと、急に方向転換したせいか、メロウは木の根に躓いて転んでしまった。

「大丈夫かい?」

「……痛い……怪我しちゃった」

「立ちなさい」

「……うん」

なんとか自力で立ったものの、メロウの両足の膝からは血が流れている。ただの擦り傷だが、この足で無理矢理歩かせるのも可哀想だ。カザスは、辺りを見回した。どこかで一晩、雨をしのげる場所がないかと思った。

「あっちの方に、煙が見えるな。人がいるのかもしれない。行ってみよう」

「でも……魔女の家だったらどうするの?」

子供たちの噂では、この西の森には魔女が住んでいて、好物は子供の肉で会うと拐われて食べられるらしい。怖がるメロウに、カザスは明るく笑った。

「ハハハ、そんなのはもういないよ。西の森の魔女といわれていたラントゥルは10年前、磔になったんだ」

「ラントゥル?」

「おっと、子供は知らなくていいことだったな」

魔女は火炙りにされて灰になった。それを幼い子に伝えることはしなくてもいい。カザスは息子を安心させるように、メロウの手をつかんだ。



「……家だ」

煙のある場所を目指して歩いていると、雨がポツリポツリと降りだしてきた。空も暗い。先程までまだ夕暮れだったのに、森の夜の訪れはとても早かった。雨音が激しくなる。メロウは先程より赤い顔をしていた。疲れもあり、発熱しているのかもしれない。

「ほら、家があるぞ。メロウ」

森の中の小さな家。誰か住んでいるのか、明かりが灯っていた。カザスは思わずホッとする。

「雨がやむまで休ませてもらおう」

「パパ、怖いよ」

「心配ないさ。魔女なんていないよ」

カザスはそう言うが、メロウは怖くて仕方なかった。しかし、体調の悪さから大人しく父に従う。煙の出ている家の前に到着し、カザスは入り口らしき扉を軽くノックした。

「すみません。猟師のカザスといいます。雨が急に降ってきて……もしよければ雨宿りをさせていただけませんか?」

「断る」

すぐに帰ってきた返答は冷たいものだった。カザスは困って、腰につけていた鳥を外して二匹ほど袋に入れる。そうして残りを、家主に渡そうとした。

「撃ったばかりの鳥と猪もお渡しできます。子供がいるんです。怪我をしてる上にこの天候を怖がっているので、せめて子供だけでも……」

そう言うと、突然ぎいと音がなり、ドアが開かれた。部屋の中に立っていたのはがっしりとした背の高い男だ。顔は、フードを深くかぶり、見えるのは鼻の下の口までだった。口からは鋭く尖った犬歯が両方出ており、その容貌に、カザスはびくりとする。そんなカザスの反応を気にせず、男は後ろを指差して言った。

「ここから20分歩いた先に、洞窟がある。そこで休め」

「20分…」

「パパ、寒い」

メロウがカザスの上着の裾を引っ張る。メロウは発熱している上に、雨に濡れている。男の言う通り、本当に洞窟があるかもわからない。発熱した子供をこの雨の中、連れていくのに抵抗があった。

「子供だけでも、中にいれてもらえないでしょうか。俺は外でもいいので」

「断る」

「お、お願いします」

「断る」

男は首を縦に降らなかった。そうこうしている間に、メロウががくりと膝をつく。

「め、メロウ。大丈夫か?」

慌てて立ち上がらせるが、メロウはだらんと四肢を投げ出してカザスに身を任せた。立っているだけでも、辛いようだ。

「あの、どうかお慈悲を。なにもしなくて構いません。ただ、暖かいところに置いていただけたら……お願いします。明日になったらお礼は必ずしますので」

男はじっとメロウを見て、それから「………子供だけだぞ」と渋々とカザスの願いを承諾した。

「ありがとうございます」

メロウの脇に手をいれて、肩に担ぎ上げる。そして、カザスに言い放った。

「鳥や猪はいらん。そのかわり、明日の昼過ぎまでに、三日分の魚と肉とパンを持ってこい。それと引き換えに、子供を返してやる」

「……わかりました」

まるで脅迫だ。だが、その条件を飲むしか、カザスには方法がなかった。



家に入ったメロウは濡れた服を脱がされて、タオルケットを被せられた。そうして、薪の燃える暖炉の前に置かれたクッションの上に座らせられる。男はメロウから離れて隣の部屋に向かった。暖炉はとても暖かくて、冷えた体を暖めてくれた。うつらうつらと眠りにつこうと思ったところで、男に抱き起こされる。何かと思った瞬間、口に、苦くてドロリとした液体を流し込まれた。

「う、ごほっ、や、やだっ」

「飲め。解熱剤だ」

「……苦い」

「薬が旨いわけなかろう」

男はその液体を残すことは許してくれなかった。泣きながら何とか飲み込むと、今度は熱いスープが口に入ってくる。それは体に染み込むようにとても美味しかった。

「美味しい……」

「そうか」

男は先程のカザスへの態度とは別人のように、メロウを甲斐甲斐しく介護した。放置することなく、スープもスプーンでひとくちずつ与えてくれた。擦りむいた膝も清潔な布で拭いてくれて、薬草を貼ってくれた。

「…おにいさん、ありがとう」

おじさんと呼ぶか迷ったが、そもそも顎と口だけでは男の年齢がわからない。カザスと同じくらいかもとは思ったが、雰囲気的におにいさん、とメロウは呼んだ。

「おにいさん、お名前は?」

「名前はない。親代わりのやつはゲシュペンストと呼んだ」

「ゲシュペンスト(幽霊)?」

「あぁ。お前は、メロウと言うんだな」

「うん」

男の手が、さらりとメロウの額の髪の毛を撫でる。そして、その手触りを確かめるように、何度か繰り返した。ひんやりとした冷たい掌だった。

「メロウ……か」

メロウは薬が効いてきたのか、また睡魔に襲われる。今度は起こされなかった。メロウは男に抱っこされたまま、深い眠りへと落ちていった。




朝、メロウが目を覚ますと小屋には誰もいなかった。昨日は熱で朦朧としていたからわからなかったが、小屋の中は殺風景で必要最低限の物しかない。側にあったメロウの服は乾いていて、それを身に付けてから男を探す。ふと、窓から外を見ると、雨はすでに上がっていて、晴れた青空が広がっていた。

「起きたのか」

後ろから声をかけられて、振り替えると男は相変わらず黒いフードを深く被った姿で、隣の部屋から出てきた。

「熱は下がったのか」

「うん」

「腹は減っていないか?」

訊ねながら、男は机にパンを用意してくれた。それは日持ちするが、とても固いパンだった。

「昨日のスープを温めてやる。それにつければ柔らかくなる」

「うん、僕、手伝うよ」

「いい。邪魔だ。座っていろ」

男はメロウを椅子に導いて座らせた。そして、竈に火をつけて、鍋を回す。

「おにいさんの名前、何て言うの?」

「……昨日も教えただろう」

「ゲシュペンストって……そんな恐ろしい名前なわけないじゃないか」

「残念だが、私の名前はそれだ」

気を悪くする素振りを見せず、皿にスープを盛る。そしてメロウの前にパンとスープを置いた。

「じゃあ、僕もゲシュペンストって呼んでいいの?」

「勝手にしろ」

メロウは遠慮なく、パンに手を伸ばす。スープにつけると、確かに柔らかくはなるが、それでもまだ固い。男……ゲシュペンストは必死に噛みきろうとパンを伸ばすメロウを見て、クスリと笑った。メロウが初めてみた笑顔だった。

「それを食べたら出ていけ」

「でも、パパが来るまで待たないと……」

「ここには来ない。私がそうしているからだ」

「え?」

「この家を出て、真っ直ぐに行くと雷に打たれて焼けた木がある。それを左に曲がって進むと池がある。そこで待っていろ。父親が迎えに来るだろう」

「でも、僕がパパと先に会えたら約束した食べ物は、貰えないかもよ」

「構わん。始めから、期待してない」

ゲシュペンストは、メロウの頭をくしゃりと撫でた。

「この家の物は持ち帰るなよ」

「僕が、ここから何かを盗むように見える?」

「………見えない。が、人間は天使のような顔をして悪魔のような行いをする時がある」

そう言いながら、ゲシュペンストは再び隣の部屋に入ってしまった。




メロウは言われた通りに家を出ていくか、それとも父親を待っているか少し悩んだが、約束は約束だ。そのままゲシュペンストの家で、父親を待っていることにした。しかし、昼間を過ぎて、夜になっても父は訪ねてこなかった。また、外は真っ暗になる。

「遅いなあ、パパ……」

道で迷子になってしまったのだろうか、と窓の外を見ていると扉がノックされた。

「パパ!」

父親だと思い込み、返事をせずに扉を開けると、そこにはメロウと同じくらいの年齢の、白髪の少年が立っていた。大きな目をくるりと見開き、少年は驚いた顔をした。

「おや、君は誰だい?」

「あ………」

メロウは一歩後ろに下がる。すると、とんと背中がなにかに当たった。振り向くと、いつのまにかゲシュペンストがすぐ側に立っていた。

「メロウ、帰らなかったのか」

「やあ、ゲシュペンスト。ご機嫌はいかがかな?」

「ビアンカ………例の薬だろう。できているぞ」

「助かるよ。そうそう、この子は誰だい?人間の子か?」

「……成り行きで助けた子供だ。明日には返す」

「おいおい、冗談は止せよ。子供を助けるなんて。裏切られるのはお前だぞ」

「……知っている!!だから、返すと言っているではないか!!」

ぐわっとゲシュペンストが口を開く。その牙に、怯んだメロウとは反対に、ビアンカと呼ばれた少年はクスクスと愉快そうに笑った。それから怖がることなく、ゲシュペンストから薬の小瓶を受けとる。

「本当に、わかっているのか知らんが、ラントゥルの二の舞にはなるなよ」

ビアンカは笑いながら、家に上がらずに扉を閉めた。ゲシュペンストは、メロウの肩を叩く。怒っているわけではなさそうだが、不機嫌ではあった。

「何故、帰らなかった」

「だ、だって、パパが来ると思ったから……」

そう言うと、ゲシュペンストはため息をついて首を横に降った。

「お前の父親は来ないといっただろう」

「僕、捨てられたの?」

「違う…………この家は結界が張ってある。普通の人間は来れないのだ」

「けっかい?」

「そうだ。昨日はたまたま血界を解除したのを忘れていて……今日はもう遅い。また泊まっていけ。明日の朝、帰してやる」

ゲシュペンストは外を見て、目を細めた。少し悩んだあと、苦虫を噛み潰したような声で「お前の父親はずっとここを探していた。だから捨てられてなどない」と呟いた。



ゲシュペンストは最初、生焼けの鹿肉を出してくれた。メロウが戸惑っていると、それに気付いたのかメロウの分だけワインのような液体で煮込んでくれた。メロウが美味しそうに食べる前で、自分は生焼けの鹿肉をそのまま食べていた。

「ゲシュペンストって、一人でここに住んでいるの?」

「今はな」

「寂しくないの?」

メロウが聞くと、少し間があってから「寂しくない」と返答が来た。でも、それは嘘だとメロウは思った。この男は、一人が寂しいのだ。メロウの存在に戸惑っているものの、嫌悪感は感じない。


夜になり、また暖炉の前で寝ようとしたら、ゲシュペンストがひとつの扉の部屋に招いた。部屋にはたくさんの書物が置かれ、散らかっている机と棚の奥に、ベッドが置いてある。今日はベッドに寝ろ、とゲシュペンストが合図した。

「一緒に寝るの?」

「私は寝ない。夜は働く時間だ」

「ふうん……」

布団は薄く、夜の空気に冷えて冷たかった。メロウは布団に潜り込み、側を離れようとするゲシュペンストに向かって話しかけた。

「僕、再来月になったらお兄さんになるの」

「子供が生まれるのか?」

「うん。妹か弟ができるの」

「良かったな」

「そうしたら、ゲシュペンストにも見せてあげるね」

そう言うと、ゲシュペンストは困ったように口の端をあげた。




翌朝、同じように固いパンを食べたあと、メロウはゲシュペンストに連れられて、雷に打たれた木まで歩いていった。

「もう一人で行けるな」

「うん。あのね、僕二日泊まったから、六日分の食糧持ってくるね」

「………持ってこなくていい」

「ううん。だって、約束だもん。約束は、破ったら駄目なんだよ?僕、嘘つきにはなりたくないもん!」

離れようとする気配を悟り、メロウはゲシュペンストの腰に抱きついた。いきなりのことで驚いたゲシュペンストは、バランスを崩し後ろに尻餅をつく。その拍子に、フードが外れてしまった。

「あっ………」

フードの中から出てきたのは、左頬に痛々しい傷跡がある精悍な顔立ちをした男の顔だった。ただし、額には鬼のように角らしきものが生えており、目は血のように紅かった。見たことのない姿に、メロウは目を見開いて驚いた。

「ひっ……あ、悪魔?」

「………」

ゲシュペンストは再びフードを被り直し、上にいたメロウごと立ち上がった。そして、メロウを突き放した。

「私のことは誰にも言うな!さっさと行け。二度と、姿を見せるな」

「………あっ」

「喰われたいのか?」

そう言うと、ゲシュペンストは牙をむき出しにし、ぐわっと威嚇した。メロウは竦み上がった。が、何かを思い直したように、首を横に振った。


この2日間、ゲシュペンストはメロウに何一つ危害を加えなかった。食べようとしていたなら昨日でも一昨日でも食べれたはずだ。危害を与えるどころか、介抱してくれた恩人に、自分はなんて酷いことを言ってしまったのだろう。幼いながらも自分が男を傷付けたことを理解して、ポロポロと涙をこぼした。

「失礼なこと言ってごめんなさい」

「………」

「優しくして貰ったのに……本当にごめんなさい。だから、食糧持ってくるから、また会って下さい」

「お前は、私が怖くないのか?それとも、10年前のように大人を連れてきて、ラントゥルのように磔にして生きたまま焼くのか?」

「怖くないよ。僕を食べるなら今までに機会があったでしょう。それに、パパも言ってたけど、ラントゥルって誰?」

そう言うと、ゲシュペンストはぐっと言葉に詰まったように口をつぐんだ。メロウは構わず、再びぎゅっとゲシュペンストの腰に抱きつく。その、初めて受ける他人の暖かさにゲシュペンストは戸惑った。そして、少しの時間の後、恐る恐るメロウを抱き締め返した。

「お前はいくつだ?」

「12歳」

「私は、お前のことを、信じてもいいのか」

「信じていいよ。パパもママもお世話になったらお礼をしなさいって言ってるから、食糧は用意してもらうよ」

「そうではなくて……」

「そうではなくて?」

メロウはきょとんと首を横に傾げた。とても純粋で無垢な少年だ。この子が裏切ったら……裏切って殺されるならそれでもいいかと思った。一人はそれほどまでに寂しかった。


ゲシュペンストが自分の首から下げていたペンダントを外して、メロウの首にかけた。

「これを持っていたら、結界は反応しない。この小屋まで行ける」

「……くれるの?」

「ただし、お前一人だけだ。お前、一人だけ、私の領域に入ることを許そう」

「うん!ありがとう。また来るね」

自分が彼の特別な存在になった気がして、メロウはペンダントを握りしめて微笑んだ。



雷で焼かれた木を左に曲がって、言われた通りにまっすぐ歩くと、池が見えた。そこに、カザスがメロウの名前を呼びながら辺りを見回していた。

「パパ!」

「っ!!メロウっ!!!!」

カザスはメロウの姿を見るなり、泣きそうな顔で駆け寄ってくる。そして、ぎゅっと抱き締めた。

「わ!パパ、痛いよ」

「おお、神様。ありがとうございます。息子を無事に戻らせてくれて」

震える声は、本当に息子を心配していたのだと言うことを物語っている。メロウは父親からの抱擁を受けながら、話し始めた。

「あのね、ゲシュペンストが、もう一晩泊まらせてくれたの」

「ゲシュペンスト?」

「うん、小屋の人。だから、お礼の品は2倍持っていかないと」

「あぁ。そうだな。それにしても、その小屋が昨日一日探してあるいたんだが、見当たらなくてな。私はお前が悪魔につれていかれたのかと思ったよ」

カザスは、帰ってきた息子の顔を確かめるようになぞった。そして、見覚えのないペンダントを目にする。

「そのペンダントは何だ?」

「これ、ゲシュペンストから貰ったの。けっかい?があるから普通の人は通れないんだって」

「結界?」

「僕だけ、彼の家に行っていいって許されたの。ね、パパ、早く家に帰って食糧持ってきてあげたい。ゲシュペンストったら固いパンしか食べてないんだよ。お肉も生だったし」

「お、おい。そのゲシュペンストっていうのは、あの男のことか?」

「そうだよ。おかしな名前だよね。あだ名なのかな」

見た目が悪魔だったということは伏せておいた。信仰深い父親のことだから、ゲシュペンストが角が生えていて赤い目をしていただなんて知られた日には、遊びに行く許可は貰えなくなるかもしれない。

「でもね、服も乾かしてくれて、ご飯もくれて、ベッドにまで寝かせてくれたんだ」

「そ、そうなのか」

「うん。怖い人かと思ったけど、とても優しくして貰ったの」

「……わかった。食糧は言われた量を用意する。早くママにも無事な姿を見せてやろう」

「うん!」

メロウはカザスの伸ばした手をしっかりとつかんで、森の中を歩き始めた。

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