第11話

魔女狩りから初めてビアンカが薬貰いにきた。メロウはビアンカに礼をいい、改めて契約の話を持ちかけた。

「僕の治療の代わりの契約なんだけど」

メロウがそう言うと、ビアンカはケタケタと笑い始めた。

「君から契約の話をするなんて、全く本当におかしな人間だね」

「だって治してくれたなら、お礼をしないと」

「ゲシュペンストには言ったけど、君が死んだら君の魂を貰うのはどうだい?」

「いいよ」

即答したメロウに、ゲシュペンストは悲鳴に近い声をあげる。

「メロウ!よく考えてから……」

「僕が死んだ後なんて、考えたことないし。別にいいよ」

「よくない!魂が、悪魔の手に渡って穢れたら、天国にはいけなくなるんだぞ」

「ゲシュペンストは天国にいけるの?」

「……私は、行けないだろう」

「ゲシュペンストは難しいね。複数の悪魔と契約しているから」

ゲシュペンストは幼い頃から悪魔と取引をしている。調合している薬と宝石や他の物との物々交換でも、悪魔との契約になってしまうのだ。

「なら、僕も天国にいかなくていい。だって他の条件でもビアンカと契約したら天国にはいけなくなるでしょう。その代わり、ゲシュペンストの魂と僕の魂を同じに扱って。できれば一緒にしてほしいなあ」

「メロウ!」

「ハハハ、メロウ。君はなんて面白い。君を創った神に感謝だね。いいよ、君らが死んだら、その魂はひとつになって、僕のものになる。それで契約を結ぼう」

「うん」

「……お前は……本当に……」

愚かなことを、とゲシュペンストは眉を下げた。それを見て、メロウは笑う。

「勝手なことをしてと怒る?でも、ゲシュペンストだけ天国にいけないなんて、寂しいじゃないか」

「……怒らない」

「魂になっても、一緒だよ」


いつだって、毒に近い甘い砂糖菓子のような台詞で、メロウはゲシュペンストを虜にする。ゲシュペンストはもう諦めて、メロウの頭を撫でた。


「メロウ、手を」

ビアンカが、言われたままに差し出したメロウの手首の内側に、キスを送る。チクリとした痛みを感じ、手を引くと、そこには見慣れない紋章のような痣が出来ていた。悪魔と契約すると、その悪魔の刻印をもらう。ビアンカの刻印は、見ようによっては天使のような人物が燃えている。

「契約成立だ」

「うん。あと、アデリナは…元気?」

「元気だよ。僕の手下と仲良くやってる」

「たまには会えないかな」

「彼女が望めばいいけど、難しいんじゃないかな?アデリナは人間が嫌いだ。助けてくれなかった家族も含めて、ね」

「そっか」

しゅんと肩を落とすメロウに、ビアンカは背中を叩いた。

「ま、殺しはしないから大丈夫」

「うん、アデリナが生きていてくれるだけでも、嬉しいよ」

「それと、君が気になっていたことを教えてあげるよ」

「気になってること?」

ゲシュペンストはメロウをちらりと見る。メロウ自身も言っていることがわからなかったらしい。何を気になっていたのかとゲシュペンストが問う前に、ビアンカがゲシュペンストに紙切れを差し出した。

「そう言えば、これ。僕の主様が読みたいらしくて。ここにあるかな?」

「本か?」

「そう。探して。貸してくれたら金貨3枚」

「わかった」

ゲシュペンストが、仕事部屋を開けて、中には入る。そして、すぐに見つかり出てきた時には、メロウとビアンカの話は終わっていたようだ。

「ありがとう、ビアンカ」

「じゃあ、また。薬がなくなったら来るよ」

ふふとビアンカは笑いながら消えた。結局のところ、ビアンカが天使なのか悪魔なのかはわからなかった。




深夜、ゲシュペンストが仕事を終え、ベッドに入ってくる。メロウの横に横たわると布団をかけ直してくれた。その手を遮って、メロウはゲシュペンストの腹の上に馬乗りになる。甘えたい時のしぐさだった。

「どうした?」

「ねえ、ゲシュペンスト。繋がろう」

突然の誘いに、ゲシュペンストは目が点になる。メロウは、ゲシュペンストのズボンの上から、股間を撫でた。

「メ、メロウ?」

「僕はもう、君から離れられない。後悔もしない」

メロウはポケットから、小さな小瓶を取り出す。中の液体を、手のひらに少しだして混ぜた。ドロリとした液体は、ゲシュペンストが作ってビアンカに渡していたもの……正確には、媚薬だ。ゲシュペンストが止める前に、自ら自分でズボンを脱ぎ、下着に手をいれて、後孔に中指をいれた。

「ん、これ、さっきビアンカがくれたの。ビアンカの魔力が加わったやつだって」

「さっき二人で話していたことはこれか…」

「そ、う。男同士で、繋がるときは、ここを使うんだって。ねえ、ゲシュペンストの、入るかな」

こんなに狭いのに、と中指を抜き差しする姿に煽られて、ゲシュペンストはごくりと唾を飲んだ。

「メロウ、その、本当に、いいのか?」

「いいよ。もう覚悟はできた。ゲシュペンストは?したくない?」

赤い顔をしながら、メロウはゲシュペンストの大きな手を握りしめる。そして、即効性の媚薬が聞いてきたのか、疼く孔に導いた。孔に触れて、メロウの指とゲシュペンストの指が2本同時に中には入る。メロウの中は温かくて、指だけでも気持ちが良かった。

「……したい。メロウ、私を受け入れてくれるのか?」

「……うん…あっ」

メロウはずるりと自分の指だけを抜く。メロウの中にはいっているのはゲシュペンストの指だけになった。ゲシュペンストは指の本数を増やす。痛みなんて感じないほどに、ゆっくりと、時間をかけて、解したいと思った。

「ぁん、あっ、は、あっ」

「……は、可愛い、メロウ」

メロウが気持ち良さそうに喘ぐ。メロウの勃起した可愛いぺニスにも手を伸ばし、先端を擦ると先走りが滲み出ていた。しばらく、指を抜き差ししていると、メロウが「も、平気」と言った。ゲシュペンストの股間は既に勃ち上がり、ズボンがはち切れそうだった。身体の大きさに比例して、ゲシュペンストのぺニスもかなり大きい。どんなに解しても媚薬を使っても、受け入れるのは負担になる。体位を変えようとメロウの腰をつかむと、メロウはふふと笑った。

「こ、のまま、僕が、腰を落とす」

「しかし、それは……」

「いいの、僕がしたいの」

ハアハアと息を見出しながら、メロウは自分の孔にゲシュペンストの先端をくっつけた。そして、ゆっくりと、腰を落としてく。

「あ、あっ、ああっ」

「っ、メロウ、痛くないか?一度……」

「ぬ、ぬいちゃ、ダメっ、あ、う、あっああっ」

メリメリと亀頭がメロウの中にのめり込む。ゲシュペンストは気持ちよさよりも、メロウの体が心配だった。

「ん、は、入った?」

「まだ先端だ」

「え、はぁ、あっ、こ、こんなお腹一杯なのに?」

「す、すまない。私が、化け物だから…」

ぺニスも大きいのだろうかと言おうとした唇を、メロウは自分のでふさいだ。慌てて口付けをしたからか、ゲシュペンストの牙でメロウの唇を、切ってしまったようだ。鉄の錆びたような味がして、ゲシュペンストは唇を離す。互いの唾液が、赤く染まっていた。それを、メロウは舌で舐めると口の端を持ち上げた。メロウの扇情的な姿に、ゲシュペンストはくらりとする。

「もっと、ゲシュペンスト。もっとキスして」

「だが、お前を傷付けてしまうかもしれない」

「ん、いいの、好き、好きだから。もっと」

今度は切れないように、舌を出して、外で絡ませる。ゲシュペンストはメロウの小さな乳首に手を添えて、押し上げた。最初は「くすぐったいよ」と笑っていたメロウだったが、だんだんと気持ちよくなってきたのか喘ぎ始めた。

「ん、ん、ゲシュ、ペンスト」

徐々に慣れてきたのか、ゆっくりと腰を進める。メロウの中はじんわりと温かった。そして、長い時間をかけて、ゲシュペンストはメロウの中に、全てを納めた。ゲシュペンストの陰毛を尻に感じ、メロウはホッとする。本来なら絶対痛みがあるはずなのに、薬のせいなのか、気持ちよくて、気持ちよくて満足感でいっぱいだった。

「ふふ、はぃっ、たね」

「っ」

「……ゲシュペンスト?」

「メロウ、ありがとう。私を、愛してくれて」

化け物である自分を、受け入れてくれてありがとう、とゲシュペンストは言った。右目から堪えきれなくなった涙が頬を伝う。それをメロウは優しく笑いながら唇で受け止め、舌で拭い、再びキスを送った。

「ゲシュ、ペンスト」

「なんだ?」

「愛し、てるよ。その角も、そ、の目も、その牙も…僕は、ありの、ままの、君を愛し、てるよ」

「私も、お前を愛している」

「生まれてきてくれて、ありがとう」

「そのまま返そう、メロウ。お前が生まれてきたのは奇跡だ。生まれてきてくれて、ありがとう」


震える声で返したゲシュペンストに、メロウは照れるように微笑んだ。


ゲシュペンストは初めて、化け物に産まれた自分を愛せた気がした。

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