ふと目覚めると私よりも年下の人種の少年がそこに居た。

「やあ、身体の調子はどうだい?」

 と、聴かれる。身体の調子と言われ、意識を自分の身体へと向けると、腐り果てていた自分の身体が治っている事に気付く。

「これは…」

「かなり酷い状態だったけどなんとか治せた様でよかったよ」

 治す?悪魔憑きになって処分されるのを待つだけの私を?

 そんなことが出来るのか?でも、実際に私の身体は元の身体に戻っている。寧ろ前よりも調子が良いかもしれない程快調だ。

 だとしたら、この身体を治したという目の前の少年の正体は一体?

「急な事で驚いている中申し訳ないけれど、取り敢えず私の話を聞いて貰えるかな?」

「はい…」

「そうだな…私は悪魔憑きと呼ばれる症状を治す事が出来る。だが、この力はあまりにも特異な力だ。だから私はこの力を出来得る限り隠したい。でも、折角の力を無駄にするつもりもない。だから君には色々と手伝って貰いたいと思っているんだ」

「手伝う…ですか」

「そう、私はディートリヒ男爵の長男でね。表向きはその男爵家の一員として生活を営み続けたいと思っているだ。何故ならば、そうやって隠れていないと、この悪魔憑きを治す力を見た人々がどういった行動に出るのか今一予想出来ないからね」

「でも、それは私も同じでは?」

「君は私を裏切るつもりと?」

「いえ…、元に身体を治してくれた人を裏切るような事は」

「でしょ?普通の感性で考えれば、そういった考えを持つ様な人は少ない。だから、君の様に治療した人にお願いして活動を支援して貰おうかと思っているんだ。どうかな、私に協力してくれるかい?

 とは言っても、今すぐ答えを出すのは難しいだろう。また明日ここに来るよ。食事や着替え等は今用意するから、取り敢えず明日まではそれで凌いでくれ」

「はい、解りました」

「じゃ、これね」

 次の瞬間赤紫色の光が瞬き、その光が納まった時には、服と缶詰が何処からともなく現れた。

「今のは?」

「魔法さ」

「そんな、何もない所から何かを生み出すなんて、そんな神様みたいな事…」

「残念ながら私は神様みたいな高尚な存在では無いよ。悪魔憑きとして苦しんでいる人達を救いたいけど、自分の安全を確保したい俗物だよ。じゃ、また明日」

 そういって、私を救ってくれた人は何処かに行ってしまった。

 一体彼はなんなのだろうか?悪魔憑きという教会に処分されるだけの存在を癒やし、無から物を生み出す。私はそんな彼の役に立てるのだろうか?

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