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フェアドレーツェ第二王女は自身を攫ったのにも拘わらず、禄に警備もしていなかった施設からの脱出に成功した。だが、脱出した先で彼女が見たものは阿鼻叫喚の坩堝であった。
見慣れたはずの町並みは紅に染まり熱気によって彩られていた。
「なんなのですか…これは」
「大規模な襲撃でしょうか」
フェアドレーツェ第二王女の呟きに応えるヘェッツは、心此処に非ずという演技をしながらフェアドレーツェ第二王女の反応を愉しむもの。
彼にとってフェアドレーツェ第二王女の反応は在り来たりなものではあるものの、及第点と行った処という感想であった。
「まずは殿下の安全を確保しませんと…とはいえ、これだけの騒ぎ、何処に身を隠すべきか」
「王城か…学院か」
ヘェッツの進言に対しての返答は酷く小声であった。
「ここからですと王城の方が近いですね」
と、ヘェッツは言葉を返す。だが、その言葉を聞き建物越しに王城を見やると、王城もまた赤く燃えていたのだった。
「ですが、あの様子では安全とはいかないでしょう。なので一先ず学院に向かいましょう殿下」
「そうね」
王都だけでなく、王城までをも襲撃対象として火の手が上がるその光景は、攫われ逃げた直後のフェアドレーツェ第二王女の心には、何処か非現実的な夢の様な心地でしか認識出来なかった。
しばらく後、ヘェッツとフェアドレーツェ第二王女の二人は何事もなく学院都市へと到達した。だが此処学院都市も決して無事とは言えない惨状であった。
王都グフォースアーティグシュターツの他の場所同様に火の手が上がり、学生が逃げ惑う姿が其処彼処で見受けられる状況だったのだ。
「殿下…此処も安全とはいかないようですが、この状況では学院都市内の殿下の邸宅か私共が借りております邸宅へと一度赴いた方が…」
ここに来るまでの間に見続けてきた光景により、フェアドレーツェ第二王女の心は悲鳴を上げ限界を迎えようとしていた。その為、ヘェッツの言葉は既に遠く聴こえていない様だった。
「殿下…ここからですと私共の邸宅が近いですので、まずはそちらに向かいます」
一応フェアドレーツェ第二王女に声を掛け、茫然自失と行った状態のフェアドレーツェ第二王女を引率して移動するヘェッツであった。
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