昼間剣術の授業の際にフェアドレーツェ殿下の組み手の相手をした結果、何故か剣術の稽古を今後つける事になった日の夜。最近の日課となっている姉様との夜伽の時間が終わった直後の出来事。

「ヘェッツ。フェアドレーツェ殿下と仲良そうでしたね」

「…アレを仲が良さそうと言うのは無理があるのではないですか?姉様」

「そうかしら?端から見ていると男爵家の貴方に積極的に話しかける殿下の御姿は、他人から見たらどの様に映るのかしらね」

「それは…何も知らなければ、所謂玉の輿とかでしょうか…」

「そんな感じよ。気を付けなさい、貴族社会は嫉妬に塗れているわ」

「はい、肝に銘じておきます」

「如何に殿下のお気に入りとは言え、殿下の目や耳に入らない方法で、貴方に何かしらのネガティブな行動を取る事は出来るでしょうからね」

「私としては、しがない男爵家の嫡男にこれ以上を求められるのは酷だと思っているのですが」

「殿下に気に入られたのなら、それは諦めて受け入れるしかないでしょう」

 何とも最早、ピロートークとしては味気ない会話をしているものである。


 そんな学院生活を送りながらも私は裏稼業を蔑ろにはしていなかった。とは言え、イェーガー・デァ・ドンクレン・ナハトも大分大所帯になってきたので、大半の物事は集めた人員に任せる事が出来るので、私は定期的な報告を聞き大方針を指示する程度で済んでいる。

 私が直接動く様な案件は悪魔憑きを治療する事位であった。

 それと、ここ王都グフォースアーティグシュターツで色々と調査をした結果、地下にはウンシュターブリッヒカイト教団の施設が数多く存在している事が解ってきた。

 私達が認識出来ているだけでも、相当数の施設と人員が存在している事から、王都延いては王国への教団の影響力が窺えた。

 さらに調査の結果世界有数の宗教組織であるリヒター教団へ、悪魔憑き回収の指示を出している証拠等も掴んでいる事から、ウンシュターブリッヒカイト教団はベーエアデ王国だけではなく、リヒター教団が布教されている地域・国家に関しても、何らかの影響力があるというのが想定出来た。

 なので、私達は一つずつ施設を破壊して回る事の不毛さを感じた為、王都にあるウンシュターブリッヒカイト教団施設への同時多発襲撃計画を打ち立てる事にしたのだ。

 その為には相手の戦力の把握は勿論の事、様々な工作や準備を行う必要がある為、私達イェーガー・デァ・ドンクレン・ナハトはこれに奔走する事になったのだった。

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