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さて、イェーガー・デァ・ドンクレン・ナハト初となる大規模な作戦と、王都グフォースアーティグシュターツのウンシュターブリッヒカイト教団施設に対する同時多発攻撃は、私が愉しむ為というのが言ってはいけない本来の目的である。
言ってはいけないと言う事は解っているので、イェーガー・デァ・ドンクレン・ナハトの組織内でこれを行う理由を考える必要があった訳だが、このイェーガー・デァ・ドンクレン・ナハトは悪魔憑きを助け治療する事で大きくなった組織。ウンシュターブリッヒカイト教団とそれに与する組織に対する心象というのは、私が何かコントロールをするまでもなく最悪である。であるからして、悪魔憑きを処分したり実験材料として回収する件の組織に対して、壊滅を目的とした活動を行うと言う事を通す事は簡単に可能であった。
故にこそ、イェーガー・デァ・ドンクレン・ナハトのその熱意は嫌が負うにも高まるもので、この王都グフォースアーティグシュターツのウンシュターブリッヒカイト教団施設への同時多発作戦の立案にも熱が入るというものであった。
そして同様にして、この作戦に関わる人員全ての熱意もまた、作戦内容が煮詰まって行くにつれ高まっていった。
だから私はその熱量をどうにかして制御下に置く事に奔走する事になる。
幹部であるジーブン・トーンライターを宥め賺して、その指揮下にあるメンバーの統率から始まり、個別対応も時として行った。こうした地道な活動も相まって、秘密裏に準備が整うに至るのだった。
私はこの様な活動を行いながらも、作戦を実行する為の表向きの切欠作りをする為に、学院生活を有効活用するのだった。
学院生活を送る事数ヶ月。
初夏の日差しが眩しく照りつける昼。汗が滴るまでとは言わないまでも、汗が滲む様になり夏を意識し始める頃合い。私とフェアドレーツェ殿下との仲は、年も近い事もあり剣術の指南役と指南される側と言う枠をはみ出しつつあった。
詰まる処、承認欲求的なものが満たされたからなのか、それとも同年代で在りながらも自分を指導出来るだけの力に惚れ込んだのか。いずれにせよ、私とフェアドレーツェ殿下の間は日に日に距離が近づいていた。
フェアドレーツェ殿下はその血筋から魔力は豊富であると言う事から素質は十分であった。だからちょっとした切欠…油断とも取れる状況を生み出す為の関係が気付けたこのタイミングが、札を切るにはもっとも効果的な瞬間だった。
そう、ウンシュターブリッヒカイト教団が王族という実験材料を手に入れる事が可能だと思わせる為のタイミングを作るのだ。
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