王都浄化騒乱
1
「殿下偶には気分転換に王都散策でもしませんか?」
「いきなりですね」
「そうでしょうか?毎日修業に明け暮れるのも良いですが、様々な体験をするというのも修行ですよ?」
「そうなのですか?」
「はい、様々なシチュエーションを身を以て体験する事で、色々な場面でどの様に戦うべきかと言う、シミュレーションの精度が高まりますから」
「そこまで言うのでしたら解りましたわ」
「では、日取りはどう致しましょう。護衛の都合もあると思いますので、直ぐにと言う訳には参りませんから」
「護衛の都合がつき次第で。その都合に合わせなさい」
「畏まりました」
こうしてフェアドレーツェ第二王女殿下を学院と警備の厚い場所から遠ざける事に成功した。
後は、この機会にウンシュターブリッヒカイト教団がどう動くかである。
事前の調査で、ウンシュターブリッヒカイト教団が機会さえあれば王族でさえ手に入れようとしているのはリサーチ済みなので後は待つばかりである。
そして、王都散策当日。私はヨドヤ商会へと王女殿下をエスコートした。
新興商会の売り出している新進気鋭の商品達を貴族用の個室にて紹介して貰う。
王族と言う事で商会から出向いているのは商会長であるエフファである。
「殿下、此方の化粧品は…」
「殿下、此方の下着は…」
等と、同じ部屋に私がいるというのにエフファは何を考えているのか、下着の紹介を徐にし始めたりもしたが、そう言った事を除けば穏やかな時間が過ぎていった。
昼食もこのヨドヤ商会の王都総合商館本館の貴賓室にて用意して貰い舌鼓を打った。護衛の都合上出来るだけ移動を避けた為の処置である。
一通り商品を紹介して貰って学院へと帰路についた時事件は起った。
私は学友という立場で殿下と殿下付きのメイドと一緒に馬車に同乗していたのだが、その馬車の中に催眠ガスが散布されたのだ。私は特に問題ないのだが、この惑星の一般的な肉体では抗えない類いの催眠ガスであった為、殿下とメイド同様に私もその催眠ガスの影響を受けた様に振る舞った。
それにしても、馬車ごとの誘拐を行うとは、護衛全員がウンシュターブリッヒカイト教団の手の者だったという訳だ。
何とも最早怖い話しである。
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