姉様との爛れた肉欲に塗れた生活を、数日営みつつ迎えたベーエアデ王国立貴族学院への入院式は滞り無く終わった。

 ベーエアデ王国国王の挨拶に始まり、王国の重鎮達も多く出席する大変大きな行事ではあるのだが、出席者は貴族のみである為にイレギュラーな事が起る筈も無く、粛々と式次第は進んでいった。

 明くる次の日、学院生活が始まる。

 王国全土から集められるとは言え、貴族の子息子女だけとなると、年度により学年の人員にはバラつきが出るものだ。因みに私の学年は三十人程である。

 王国で最も多い爵位は騎士爵で在る為、必然的に騎士爵家の子息子女が多くなる。

 騎士爵以外の爵位だと、今年の学年には王族であるフェアドレーツェ・ベーエアデ第二王女と男爵家の嫡子である私ヘェッツ・ディートリヒのみであった。

 だからこれは必然だったと諦めるしかないのだろう…


「ヘェッツ・ディートリヒ卿。私の従者になる栄誉を授けます」

 学院生活初日。講堂に学年が集まりホームルームが終わるやいなや銀髪を靡かせフェアドレーツェ・ベーエアデ第二王女はツカツカと金眼を真っ直ぐ此方へ向けて私の元へと来ると、開口一番そう宣言をしたのだった。

「フェアドレーツェ殿下、大変嬉しいお誘いではあるのですが、私は田舎の領地をまかされます男爵家の者で御座います。幾ら同じ学年とは言えども殿下の様な高貴なお方の従者は私には過分で御座います」

「私が許す。栄誉に浴せよ」

「…はっ、畏まりました」

 臣下の礼をしつつ返答する私。しかし、これ以上断りの言葉を並べるのは不敬に当たりかねないので、殿下の言葉を受け入れる。そもそも、これ以上言葉を並べたところで、話しが出来る相手では無さそうなのが、このちょとしたやり取りでも理解出来たので、諦めて受け入れたと言うのが正解だ。

 つと、周囲に控えるメイドと護衛役に目を向けると、何とも言いがたい表情をしていた。

「では、皆の者、これから学院内を散策します、着いて来なさい」

 私の学院生活の自由はここに失われたのだった。

 だが、何とかして自由を取り戻したい…が、表向きはしがない男爵家の嫡男を演じるつもりなので、今後どうしたものかと思案しながら、フェアドレーツェ・ベーエアデ第二王女に付き従うのであった。

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