嘗てない程の群像劇。その背景に込められたスペクタクルな世界観に息を飲む

 ある日突然、なんの前触れもなく職員室ごと異世界転移。職員室にいた23名の人が一斉に異世界へ転移してしまった――。

 未知の世界で始まるサバイバル生活。地球に似た環境の中、彼等はどうやって生き延びるのだろうか。禁足地と呼ばれる場所に転移した彼等。現地で敵対される事無く友好を気遣ってくれる人々。背後に見え隠れする政治的な思惑が人間関係に大きなヒビを打ち込んでくる。

 現地の人はギーム(魔法)を使えるファンタジーの住人。言葉の壁を乗り越えながら交流が深まっていくのだが……。


 序盤は転移させられた多くの人々の困惑の物語から始まる。やがて異世界の交流が深まり、現地の昔の神話を知る事によって意外な事実に繋がっていく。

 地球の日本と異世界エレディール。そしてこれらの地下社会の人々の繋がりが「すれ違い」というキーワードによって複雑怪奇な現象を起こしていく。

 日本にある宗教法人団体。異世界の裏社会。転移させられた人々の内部分裂する関係図。異世界での神話にある星祭り。日本と異世界を行き来する巫女の正体とは?

 視点が現在の日本や異世界の転生された人々や、異世界の人々など視点が替わるのが、作者様の腕の見せ所。
 多くの謎を残しながらミステリーのようにストーリーは進んで行く。細かな部分が重なり繋がっていく様は流石の一言。

 心理描写も素晴らしく、そして作り込まれた独自の世界観が圧倒的に広がるパホーマンス。そして嘗てない程の群像劇が読む手を止められない衝撃を受ける一作です。


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