果てが地獄でも、刃を研ぎ澄まし「今」を生きる人間の物語

序章から一転として外の世界の在り方が描かれる破章はそれぞれの地獄を描いていると感ずる。
それでも彼らは今を、地獄の最中を生きている。自分に出来ることを、と長い「今」を生きる姿は時に目を背けたくなるような残酷さもあるが、それでも抗い生きる姿の力強さが伝わる。
世界の姿が徐々にあらわになり、本来の姿を彼らが見出だしたとき、世界を壊すような強い想いを感じ取る。
言葉が世界を作り、時に音さえ感じる程の物語はまるで自分が登場人物の背後に立ち、見守っているかのような感覚を持つ。
例え地獄の淵にあろうとも、彼らは生を手放すことはない。
虎視眈々と刃を研ぐ果てにある物語はどこに向かうのだろう。
序章と同じく腰を据えて読む物語であるが、是非、こちらも序章と併せて読んで欲しい。
地獄の淵に立ちながらも力強く生きる人間の物語です。

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