日本全国において「鬼」の登場するお祭りは数多あれど、「鬼の魂を天に還す踊りを踊る」というお祭りは、なかなかに珍しいのではないでしょうか。本作は、そんな岡山の独特なお祭り「うらじゃ」をテーマにし、物語へと巧みに落とし込んだ作品です。
その土地ならではの要素を見事に活かしたコンセプト、文章の綺麗さ、岡山の瑞々しい情景描写、そして読了後の胸に残る、何とも言えない切なさと暖かさ。
それら数多くの魅力に加え、私が特に目を見張ったのは、「対比」を軸としたその美しいストーリーラインです。
主人公・ミコトの失った過去である「ウララ」の存在と、彼へ未来を指し示す「津田」の存在。そして物語冒頭と結末における、ミコトの地元岡山に対する印象の変化。
それらのコントラストによって、ひと夏の不思議な出来事を通して成長する主人公の姿を上手く描いておられる構成は、まさに圧巻です。
きっと誰もが「魅」せられる、そんな素敵なお話でした。
(「ご当地短編小説」4選/文=あをにまる)
苦しゅうない、苦しゅうない……。
これ、次の流行語じゃないですかね。もう、書籍化して、漫画化して、ドラマ化して、それでそれで……。
カクヨムコン短編賞の№1を争うこの作品は間違いなく☝の道をたどるのでは? たどっても全然ビックリしませんよ。
やっぱりかぁって。
これまで読んだ御角さんの不眠症の先輩を眠らせる方法5選、おたまじゃくし、宙を泳ぐどちらもすごい作品でした。
ですが、やっぱり被らないように別のジャンルで攻めてくる。
これは何というジャンルなのか? ただの恋愛じゃありません。
「元カノ、鬼になる」
というタイトルを聞いて、なんか笑えそうなギャップのあるコメディを想像していましたが、実際は全然違った。
笑って読めません、これ。むしろ涙を呑んで読む作品です。
岡山が舞台の様々な複雑なものが交わる作品ですが、複雑な設定だからと言ってそれは決して読みにくいとか分かりにくいというわけではなく、スッキリと勧められます。
これは、もうやられましたね、完璧に。
すべては、読めばわかる!
同窓会に出席するため岡山に帰省した主人公は、高校時代に自然消滅してしまった元彼女と再会する。そして、彼女から「私ね……もしかしたら、鬼になっちゃったのかもしれない」という衝撃的な告白をされるのだった。
タイトル、キャッチコピー、あらすじを読んだ時点で、どんなストーリーなんだろう? と興味が膨れ上がり、自然と表紙を捲りました。
滅茶苦茶面白かったです! 描写力、メッセージ性、そして卓越した構成力に、本当に驚かされました。
未読の方にも表紙を捲るワクワク感を楽しんでいただきたいため、どんな物語、というような紹介は控えさせていただきます。
ぜひ、ご自分で読んで、どんな物語なのか確かめていただきたいです。たくさんの方に読んでいただきたいです!
伝承やお祭りといった民俗学的なものが好きな方にもオススメです。