奈良時代。古代日本の厳しい社会の中、一途に慕う少女の魂の恋物語。

いまから千二百年も昔に生きた人達の物語。
未だ社会は整っていない中、だからこそみんな強く生きて、ありのままに強く人を恋する世界。
本作は、そんな中で育った不遇な少女が、魂をかけて愛しき相手を一途に想う物語です。

自分を律して頑なに生きるもの。力を頼み奔放に生きるもの。
さまざまな人達が行き交う中で、和風戦乙女のように剣もて少女は育ちます。
しかし想い人は育ちも良く、主に命を懸けて孤高と貫く頑固者、時折優しさを見せるも容易に気持ちを近づけません。
そんな相手に孤児として育った少女が全霊をかけて相手を想う、その行方は。

本作は奈良時代という時代背景を巧みに取り込まれています。
作中屈強の戦士が剣を交える中で、思わず色気を感じてしまうほどに強く、美しく。
強く慕う気持ちは夢の中で魂の架け橋を渡し、両者の想いを繋ぎ。
時に命は軽やかに散り、男女は思うままに愛を交わす。

ありのままの人間を描き切った、力強い物語。
相手を想うとはどんなことか。読み割った後には幸せな読了感に包まれます。
寒い冬に心を温かくしてくれる本作、いかがでしょうか。

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