あらたまの恋 ぬばたまの夢 〜未玉之戀 烏玉乃夢〜
加須 千花
序章
君が姿は
ことん、と物音がして目を覚ます。
「起こしてしまい、申し訳ありません、
でももう、
顔には今まで苦労してきたのだろう、日に焼け、深いシワが刻まれている。
白髪がチラホラし、あごが尖り気味で、目は優しそうな
「ん……。」
あたしは寝床のなかでもぞもぞ動いて、起きるか迷う。
眠気が
まだ昨日の、優しく、
昨日の夜はあの人が、
「恋いしい、
と言い、あたしを、
揺すり上げ、
深く引き、
揺すり上げ、
深く引き、
何度も、何度も、
明け方までそれを続けた。
あたしは途中からずっと泣いていたように思う。
恋いしさがあふれて、泣いてしまうのはいつものことだが、昨日はそれだけでなかった。
やはり、……寂しくて。
短い眠りのあと、二人で
そして、口づけをかわし、門のところであの人が旅立つのを見送った。
途中、馬上でうっかり寝てしまわないか、それだけが心配だ……。
あたしは、明け方まで起きていたせいで、体が
夜番あけなら
「もう起きて、
外から差し込む二月の昼の光と、ふわりと漂ってくる白梅の花の匂いを感じながら、
「それもそうだねぇ。」
と
「あふ。」
あくびを一つして、この新しい
「
と
「ま……。」
と
「えっへっへ。」
と
よく冷えた水がなめらかに喉を滑る。
美味しい。
「よろしければ、昼餉をとりながら、
「いいよ。」
と気軽に答える。
束の間、目を閉じる。
……あの人は、あたしの
「
どこにいても、その瞳を忘れることはない。」
と、あたしの目をまっすぐ見て言ってくれた。
あたしもだ。
「おまえを恋うてる。」
と教えてくれる。
どんなに離れていようとも、
あの人はあたしに、いっぱいくれた。
たとえ近くにいなくても、あの人の愛が、あたしを薄く包んでくれているように感じる。
「あたしと、あたしの
長くなるけど、するよ。」
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