暁の空に死を請わば－月天秘抄－

不死鳥はずっと、死を求めていた。

華仙教において崇拝の対象とされた少女は、期限付きの命の中で安寧な『死』を求めて聖都を駆ける。


華仙教(かせんきょう)が聖都、月天(げってん)。山上の宗教都市である月天では、仏と仏の守護獣である肆華衆(しかしゅう)を祀る僧侶達が閉鎖的な世界で日々修業に励んでいた。

仏の守護獣が一体・迦楼羅(カルラ)の現人神であるとされている緋蓮(ひれん)は、ある夜勤めの最中に襲撃に遭う。しかし襲撃者は抵抗らしい抵抗もなくあっさり殺されようとする緋蓮の姿に違和感を覚え、襲撃を取りやめてしまう。

翌朝、全山で行われる朝課に出席した緋蓮は、月天の中でも特に清らかであるとされている建物の天井を突き破り、二人の僧の死体が落ちてくるという事件に遭遇。『死』を追い求めてやまない緋…続きを読む