コミカル? いえいえ思惟するものです。

タイトルから意味深です。実際に心優しいヤンキーたちが登場しますし、聖王様は公民が増えるほど死後のお仕事が増えるので、負担が増えるのも確かです。でも、ここではただそれだけの意味ではないような気がします。ぜったい、なにかある。

そう思わせてしまう(疑わせてしまう?)のは、聖王であるアスタが常に思索的であるからかもしれません。公民の手本となり彼らの死後の魂を来世の国へと運ぶ大役を担う聖王。アスタは常に役目に忠実であろうとし、その生真面目さゆえに、重すぎる役目から逃げ出そうとします。

「どう生きてどうやって死ぬのか自分で選べるんだって! それが普通のことなんだよ、私たちは知らなかっただけで」

アスタのその言葉に答えるイワウには迷いがありません。

「私は聖王様と一緒に死ぬ、それでいい」

幼いころから聖王と聖棺として一緒だったアスタとイワウ、互いに思い合う気持ちは選ばれたふたりの責務という形で共有されていました。言葉にすることで凝集し、形をなす思いもあります。でも、はっきりと見えてきたアスタのイワウに対する思いは恋と言いきるにはひんやりとして、どこまでも澄み切っているように思えます。

役目を果たすことを前向きにとらえ始めたアスタ、そして変わらず寄り添うイワウ。

「ほら、わたしは蛍みたいに光っているか? このまま飛んでゆくこともできそうだ」

乾いた男湯に豊かに響くのが聞こえてきます。

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