第12話
夜を迎えた。
白杖さんはテントの中にこもっていて、他の人はキノコを焼いたりしている。
いいですね。私もしたかった……。と思いながら監視していると。
「……っ!」
背後に気配を感じた。
私は刀を持ちすぐに攻撃を仕掛けるが、私の顔に何か硬いものがぶつかってきた。
私は思わず尻餅をつく。
私は見上げると、そこには昼間見た仮面の男。仮面の男の手にはなにやら黒い球のようなものがあった。
「魔力量が低い……。魔法に弱いのだな。ならば洗脳して我らの仲間にしてやろうか」
「洗脳?」
「貴様は強そうだ……。だが洗脳してる最中に暴れられたら面倒だ。一旦眠るがよい……」
男は何やら魔法を唱えた。
眠気が襲ってくる。私はゆっくりと目を閉じた。
そして、目が覚めると太い幹の木に私の身体が縛り付けられていた。
刀は先ほどの場所に放置されている。
どうにかして抜け出さないと……。
「さぁ、貴様も我々の仲間になるがよい! 仙神学園に我々のスパイとして潜り込むが良い!」
黒い球が光を放つ。
なんだろう、黒い球は。なぜか、私の視線がその黒い球に釘付けになってしまう。
ああ、そうだ。私は悠久ノ時ヲ……。
遥かなる時の彼方へト……。
「はぶぁ!?」
「……あれ?」
どこかから火の玉が飛んできた。
私はその火の玉の出所を探る。すると、奥の方に白杖さんがいた。
火の玉は白杖さんが放ったようだ。
「大丈夫!?」
「なんとか……。悪いのですが、あそこの刀を私の手に握らせてください」
「オッケー! 任せ……」
「そうはさせません! 邪魔するのならあなたを殺すまでです!」
そう言って、仮面の男は黒い球を見せつけてくる。
「私には効かないよ! 魔力量が多いもんに! 刀、刀ぁ!」
「……白杖さん、なんか様子おかしくないですか?」
「あとで話すよ! それより刀……」
「させません!」
白杖さんが刀を手にしようとすると、男が白杖さんを羽交締めにして抑えつけた。
白杖さんは暴れるが、抜け出せない様子。だがそれで諦める白杖さんではないようだ。
「ごめんね、黒刄ちゃん!」
と、白杖さんは私の刀を思い切り蹴る。
刀の刃が私を縛ってるロープにあたり、左手に突き刺さる。
よし、解けた。
「怒りませんよ」
私は刀を引き抜く。
「不意打ちでやられたのは剣士としての恥ですね。今度は逃しませんよ」
「ちっ……!」
「逃しません」
私は男と距離を詰める。
男の背中を切り裂いた。血が噴水のように噴き出してくる。
返り血が私に降り注ぐ。
「クソ……! クソが……! 任務失敗……」
「任務?」
男は息絶えたようだった。
任務失敗。任務ということは誰かからの指示なんでしょう。まだ裏がありそうですね。
これは先生方に報告しておいて……。まずは。
「白杖さん、助かりました」
「いえいえ! 黒刄ちゃんを助けるためだから……」
「私を?」
「うん! これで未来は少し変わったと思う!」
「……未来?」
何を言っているんだこの子は。
「私も情けない……。不意打ちでやられかけるとは。精進が足りない証拠。やはり少し浮かれていたのかもしれませんね。私ともあろうものが……」
少しの油断も剣士の恥。
四将になったからといって驕らず、精進せねば。
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