第10話

 サバイバル訓練の時間がやってきた。

 3人の先生と、30人の生徒たちを乗せた船が無人島にやってくる。無人島の浜辺に上陸し、船は五日後に来ると告げて見えなくなってしまった。


「それでは、各々の班の陣地に行くがよい!」


 剣術教師の鬼頭先生と、担任の波照間先生、養護教諭の由香里先生が付き添いとしてやってきた。

 私もその先生方の隣に立っている。


「では、波照間先生、黒刄君。それぞれの班の監視に向かうとしよう。なるべく手出しはしないように。夜も警戒だけはしておくことです」

「はぁい。わかりましたぁ」

「わかりました」


 私は愛刀を携え、担当する班の監視に向かう。

 白杖さんが班長の2班が私担当。白杖さんは元気よく歩いて、ほかの友達の子がキャンプのテントを立てる候補地を探っていた。

 二人一組でなるべく行動するようにと白杖さんが指示を出し、その通りに探索などをしていくようだ。


「ふぁーあ……。波照間先生も鬼頭先生も野宿だって言ってましたねえ。監視する先生はいついかなる時でも対応できるように野宿が基本だとか。私もそれですかねぇ」


 木にぶら下がりながら監視をしておく。

 さすがに体温を保つための毛布は持ってきたが。季節は春なので夜とかはとても寒いだろうし……。

 

 すると、森の中で轟音が響き渡った。私は地面に降りてその轟音のほうに向かう。


 小林君、安藤さんペアがどうやら魔物のクマに襲われているようだった。

 熊から必死に逃げてはいるが、追いつかれるのも時間の問題。戦えばいいのにと思いながらも様子を見守る。

 小林君は剣を取り出し、クマの攻撃を受け止めた。


「あ、安藤ちゃん! 俺が抑えてるうちにぃ!」

「オッケー! くらえー!」


 安藤さんは魔法を放つ。

 火の玉がクマに直撃し、クマはその場に倒れたのだった。が、起き上がる。そして、恐怖を感じたのか周り右をして、そのまま逃げ去っていったのだった。

 初めての魔物の戦闘で、少しびっくりしたのかそのままへろへろと地面に座り込む小林君。


「や、やればできるもんだ……」

「ナイス! この調子で食べ物探そう! 私たち食べ物捜索班だからね!」


 そういって、奥まで進んでいく。

 この島の中央付近は竹林であり、タケノコを取りに行こうとしているのかもしれない。タケノコなら毒もないし見分ける必要があまりないからな。


「あれ? あれ人じゃない?」

「そう、だな。ここ無人島だろ? 先生方が言うにはアンデッド系の魔物はここには出ないとか言ってた気がするけど」

「あ、近づいてくるよ?」


 と、人が近づいてくる。

 誰だ? 人がいるなんて言う話は聞いたことがない。ただ、警戒しておくに越したことはないな。


 私は刀に手をかける。


「こんにちは」

「こ、こんにちは」


 と、近づいてきたのは黒い仮面をかぶった男の人だった。

 半分黒くて半分白い、ピエロのような仮面。黒いほうは怒りの表情、白いほうは笑いの表情を浮かべている。

 すると、その男はどこから出したのかわからない剣で、小林君たちを切りつけようとしていたのだった。


 私はすかさず飛び出て、刀で受け止める。


「誰ですか?」

「く、黒刄さぁん!」

「……ちっ、邪魔が入った」


 と、その男は逃げようと背を向ける。


「そう逃がすか!」


 私は堂伍先輩にやったように、斬撃を放つ。

 が、それをひょいっと躱され、煙がぼふんと出て、消えてしまったのだった。転移魔法でも使ったのかな。

 だけど、これはさすがに報告しないと。私は携帯を取り出し、波照間先生につなぐ。


「どうしましたぁ?」

「怪しい男が島にいまして、申し訳ないのですが取り逃がしました。煙球を使われたかと思うと転移魔法か何かでどこかに転移したようで……」

「ふむ。わかりました。鬼頭先生には僕が伝えておきますのでぇ、黒刄さんは警戒を強めておいてくださいね。夜も油断しないように。ちなみに何かされました?」

「小林君に剣で切りかかろうとしてきました」

「そうですか。わかりました。しばらく私たちは交代で眠りましょう。由香里先生にも監視を手伝ってもらいましょうかぁ」

「すいません。捕まえるべきだったんですけど」

「いえ。取り逃がしたのは仕方がありません。切りかかってきたということは殺意はばりばりにあるので注意してくださいねぇ」

「はい」


 通話が切られる。


「黒刄さん~~~~!」

「助かった……。アレ誰だったの?」

「わかりません。私もほかの先生からああいう人がいるとは聞いてませんし侵入者ですね。一応、ほかの班の人にも伝えておいてください。私も夜間、警戒しておくので」

「わかった……。ごわがっだぁ」


 誰だったんだ、あの男。








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る