第11話 ???視点

 ここはどこだろう。

 太陽が落ちて、星空が輝いている。


「白杖さーん、ご飯、出来たよ!」

「………」


 そうだ、私の名前は白杖 白魔。

 だけど、なんかおかしい。なんなんだろうこの記憶。見たこともない、聞いたこともない記憶。

 日本……女子高生……。

 そこまでは理解出来るんだけど、でも、違和感があった。私の中の記憶はまるでこの世界のものじゃないみたいな。


 飯田いいだ 美織みおり……。私の名前だ。

 いや、違う。私は白杖……。

 わからない。けど、なんか嫌な予感があった。私は思わずテントから飛び出る。


 テントから飛び出ると、火でキノコなどを焼いているクラスメイトと遭遇した。


「おそーい! 先食べてるよ!」

「え、あ、うん」

「……どしたの?」

「いや……なんでもない……。私の分はあるかなー?」

「これ。毒キノコじゃないよ」


 私は木の枝に突き刺さった焼きキノコを渡される。キノコを齧り、少し記憶を整理してみよう。

 昔、本で読んだことがある。ライトノベルとかそんなの。異世界転生とか前世の記憶とか。

 もしかして、この飯田 美織というのは前世の記憶なんじゃないかな。


 そして、この世界はゲームの世界。

 そういうことを飯田 美織の記憶は伝えている。魔物がいて、十将システムがあって。飯田 美織がプレイしていた"悠久の時の彼方へ"という学園RPGもののゲーム。

 主人公は白杖 白魔という女の子。私だ。

 そして、悪役は……。


 悪役の名前を思い出すと、私は思わずキノコをその場に落としてしまった。


「黒刄、夜宵……」


 黒刄ちゃんが悪役だった。

 悪役になった経緯もきちんと説明していた。宿泊研修の際、ピエロのような仮面を被った男とであった。その男に洗脳されて、秘密結社"悠久ノ時"という組織に入る。

 そして、物語終盤。彼女が刺客として送られてきた。

 彼女を倒すと、時の狭間という穴が開き、彼女はその時の狭間に飲み込まれ、悠久なる時を彷徨う羽目になるはず。


「思い出すの遅いよ……!」

「落としたよ。どしたの?」

「小林くん! 今日仮面の男と会ったのは本当!?」

「え? あ、ああ。殺されそうになったけど黒刄さんが助けてくれた」

「もう接触してるんだ……!」


 まずい。

 まずいまずいまずい!


 私は急いで黒刄さんのところに向かう。

 黒刄さん、洗脳されてないよね? 大丈夫だよね?

 洗脳されていたら、彼女が向かう先はとても救いのない未来しかない。

 

 私が助けないと……!


「黒刄さん、どうか何ともありませんように!」


 私は全力で走っていった。

 黒刄さんは十将の四将で、私たちの班の監視をしているはず。

 だからそんなに遠くにはいない。


「いた……! ってあっ! 仮面の男も!」


 黒刄さんは木に縄で縛り付けられていた。

 そして、仮面の男は手に黒い球のようなものを持っている。

 洗脳している最中だ!?


「え、えっと、火の玉よあの男を焼き尽くせ!」


 私は火の玉を放った。







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