第8話
会議室に戻り、私は十将の説明を受ける。
十将は授業免除、特別裁定権の所持、課外活動の自由があるのだという。授業免除はその言葉通りで、特別裁定権というのは、例えば悪いことをしている生徒を見たらその場で対応してもよいということ。
そして、十将には学校内で一つ、教室を割り振られるらしく、そこは好きに改造してもよいのだとか。
で、責務について。
学校側にももちろん、魔物討伐の依頼が来るということ。専門の駆除業者もいるらしいが、駆除業者で手におえない場合は私たちのほうに依頼が来るらしい。
依頼が来た場合は行かなくてはならない。もちろん、手に負えないということはそれほど強い魔物なので死ぬ可能性もあるのだという。
そして、学校行事の運営も十将に任されているようだ。
「概ね、説明したが理解できたか?」
「はい。灰島先輩わかりやすい説明ありがとうございます」
「ちっ……。先輩はいらねえよ。灰島って呼べや」
「はい、灰崎さん」
「……まぁいい」
何か不満気だ。
「君も、この学校を代表する十将だ。その名に恥じぬ働きを頼むよ。で、割り振られる教室はどこがいい? 一応どこ付近がいいとかは好きに選べるんだよね。アイテル教室はここかな。そこで主な書類仕事とかやることになるから」
「書類仕事?」
「灰島の説明が足りていませんでしたね。討伐した魔物の報告や、権限を使った生徒のまとめ作業は各々がやります。記録しておくのも大事ですからね」
「んもう! 説明不足ちんなんだから堂伍ちんは!」
「るっせえ!」
なるほど。そういうお仕事もあるのか……。
実はそういう細かい作業は私は少し苦手なんですけれど……。どうも文字に書き起こすのが苦手で……。
だけれどそういう弱音はきっとご法度だ。
「俺らがこの学園の表の顔になるっつーわけだ。変なことはすんなよ」
「変なこととは?」
「無理やり襲い掛かって既成事実を作ろうとしたりです」
「……それ前の四席がしたことですか?」
「察しがよろしいわね。そういうことよ」
犯罪まがいのことはするなということだな。理解した。
「あと、バッジは必ず制服につけるように。そのバッジは悪用されたら困るからな」
「はい」
私はきちんと制服に4というでかでかとしたバッジを掲げる。黄金で作られているこのバッジの存在感はすごかった。
私は会議室から出て、教室に向かう。
教室に入ると、私はクラスの人たちに変な視線を向けられたのだった。どこか、遠慮というか、避けるべきものを見る目。
私はその視線に不快感を覚えながらも席に座る。
「ねぇ……。十将入りしたらしいわよ」
「私たちと住む世界が違うわ……」
「なんであんな奴が俺たちと同期なんだよ」
「俺たちの邪魔すんじゃねえよ……」
陰口を言っているつもりだが、すべて聞こえてきたのだった。
私としてはなんも言い返せない。私の才能が、たしかに君たちの才能を小さく見せているのかもしれない。
そんな同期嫌だ……なんて思われても仕方ないだろう。けど、考えを改めるべきではないか?
そんな同期がいて嬉しい……なんて思ってもらわなくてもいい。けど……。研鑽できるとは思えないのか?
「黒刄ちゃん。十将入りおめでとー!」
「……ありがとう」
「ありゃりゃ、浮かない顔だねえ? てっきり喜んでるものだと思ってたけど……。私、なんか空気読んでなかった?」
「いえ……」
「ならいいんだけどっ! ねぇねぇ、十将ってどんな人たちだった?」
「普通の人たちでしたよ」
「そうなんだ! へぇー! 私も入ってみたいなー!」
「……研鑽をやめなければ、入れるかもしれませんね」
「本当!? じゃあ、頑張る!」
白杖さんはやる気に満ち溢れた声を上げた。
その頑張りが無駄になったとき、私は彼女に恨まれるのだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます