第4話
入学3日目からは普通に授業が始まる。
一時限目は国語から始まり、数学、英語と、そして四時限目に剣術の授業があった。
剣術の授業はジャージに着替えて行われる。
「これから剣術の指南を始める! 私の名前は
「はぁい、保健医の由香里でーす! なるべく怪我しないよう気をつけてくださいねー!」
「では、まず剣術の目指すべき場所について! 誰か私と打ち合おうとするやつはいないか?」
鬼頭先生と打ち合おうとする人は多かった。
剣術に多少心得があるもの、剣術に自信がある者……。
誰もが鬼頭先生と打ち合おうとしている。対する私もそのうちの一人だ。
「では……。そこの黒髪ロングの女の子」
と、私が指名された。
私は立ち上がり、自分の刀を手に向かう。
「名前は?」
「黒刄 夜宵です」
「ほう、黒刄家の。黒刄家ならば手加減は無用だな?」
「はい」
鬼頭先生は剣を構える。
「せ、先生! 真剣でやるんですか!?」
「黒刄家ならばこれでも大丈夫だ」
「ですがもし黒刄さんに何かあったら……」
「その時は私が未熟だったと言うだけです。それに、剣の達人を甘くみてはいけませんよ」
「どちらも真剣で緊迫感あるだろう? では、始めよう。由香里先生、合図を」
「はーい! では、スタートぉー!」
スタートの合図と共に鬼頭先生は豪快に剣を振るう。私は刀で受け止める。
また次の攻撃が来たので剣で受け止め、今度はこちらが仕掛けると防がれる。
鬼頭先生は突きを仕掛けてきたので、剣先を合わせるように私も突く。
「やはりすごいな! さすが黒刄家だ!」
「その中でも私は黒刄家の最高傑作と言われてるみたいですよ」
「そうか! 倒せるビジョンが見れないな! 剣術の授業など貴様には必要ないんじゃないか?」
「私は黒刄流にしか触れてこなかったので他の剣術も学んでみたいです」
「いい心がけだ!」
鬼頭先生は私の猛攻に耐えきれず、体勢を崩す。
私は喉元に剣を突きつけた。
「私の負けだ」
「はい」
私は刀をしまった。
「とまぁ、こういう打ち合いを真剣で出来るようになることだ。今のは少しやり過ぎだがな……。この中ではもちろん、剣術ではなく魔法をメインにして戦う子もいるだろう。それもまた良し。だが、魔法を使う子でも最低限の剣術は出来ていた方がいい。魔法を封じる魔物もいるのでな!」
そういうことだ。剣術は意外と大事でもある。もしもの時のための身を守る手段にもなる。
「まずはみな木刀を持て! 真剣は危ないからな! 木刀を素振りすること! まずは100だ!」
「えぇー!」
「そんなことより実践形式がいい〜」
私は木刀を手に取り、素振りを始めることにした。
「あれ、夜宵ちゃんは文句なしにやるね?」
「素振りは基本の練習の一つですから。基本もできないで上手くなることはないですよ」
「そういうことだ。基本がしっかり出来ていなければ強くはなれん! 剣術に自信があるような者が多いだろうが、私から言わせればまだまだ若造! ただ剣が他より上手いだけの子どもだ!」
私は数を数えながら木刀を素振り。
他の子もイヤイヤながらやることにしたようだ。さっきも動いたから少し身体が火照ってきた。
私は100回を手早くこなし、ジャージの上を脱いだ。
「黒刄。早いな」
「皆より早くやってましたから。少し休憩させてください。先生と打ち合いは疲れました」
「剣の達人同士が打ち合えばそれ相応の消耗はあるだろう。貴様は既に卒業レベルの剣術には達しているな。さすが名門黒刄家だ」
「物心ついた時から剣に触れてましたから」
父さん直々に叩き込まれた。
昔から父さんや黒刄流の門下生と打ち合いばかりしていたので剣術は割とマスターしている。
「ところでその刀……。黒刀か。珍しい」
「父さんに勝った記念で貰ったんです。美しい刀身でたまに眺めてるんですよ」
「はっはっは! 見惚れるのも無理はないだろう」
私の愛刀、新月。
真っ黒な刀身で、真っ直ぐの刃。美しい。
「先生は両刃剣を使うんですね」
「ああ。刀は私の体格じゃ小さすぎる」
「ガタイ、ものすごくいいですもんね」
私たちが話していると素振り100終えた人が増え始めていた。
先生は立ち上がり、次の指示を出す。
私は先生に木刀を手渡された。
「では、次! 一人一人私と黒刄が木刀で攻撃していく! 防いで見せよ!」
「あ、私もですか」
どうやら私も攻撃側らしい。
私は先生の指示に従い、一人一人に攻撃をすることにした。私はガードをつけてないが、他の生徒はみな胸元や首などの急所にガードをつけている。
私はガードを狙い、攻撃を仕掛ける。
「きゃっ」
「わっ」
防げない人ばかりだった。
「一発で出来るのは流石に難しいですよ。大切なのは相手の動作を見ることです」
「え、えっと?」
「たとえば……」
私は剣を振り上げる。
「こういう予備動作です。上から来るのがわかっているなら木刀を横に構えて防げばいいだけです。わざと予備動作を遅くしてますが、これを瞬時に判断して防ぐんですよ。動体視力を鍛えましょうね」
「あ、ああ!」
「黒刄さんの教えわかりやすーい……。なんかうち剣に自信あったのに……」
「これは経験の差です。仕方ないでしょう。必要であれば私が黒刄流を少し指南しますので……」
「いいの!? 黒刄流って授業料めちゃくちゃ高いんじゃないの!?」
「父に教えを乞えばですよ。私はまだ学生ですし、師範免許もありませんし、友達に剣を少し教えるだけです。放課後、体育館を借りますので黒刄流を習いたい人は来てくださいね」
私は黒刄流を少しでも指南しようとそう提案すると先生も笑ってそれがいいなと言っていた。
黒刄流の真髄までは教えるつもりはないが、それでも黒刄流を知ってもらいたいというのもある。
「あと、皆さん。黒刄流を習うのならまず度胸をつけましょうね」
「度胸?」
「先生、頼んでもいいですか?」
「わかった」
私は木刀を床に置き、手を後ろに。
先生は首元に剣を大きく振りかぶる。
「え」
「きゃーーっ!?」
「かわせよ!」
ピタッと首ギリギリで真剣が止まる。
「こういうことだ。瞬きひとつもしてないだろう? こういう度胸も必要になる」
「こ、怖え……」
「まぁ、こういうのは皆さんにはしません。ギリギリで止めるのはとても難しいですからね。慣れない人がやると……首飛びますから」
「ひっ……」
剣は常に死と隣り合わせだ。
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