第14話

 私は刀を構え、切りかかる。

 なんとなくわかる。こいつらは私が殺した男より強いと。一人だけならなんとかなりそうだが、複数人いると持ちこたえるだけで精いっぱいだ。


「由香里先生、大丈夫ですよぉ。もう来てますからぁ」

「何をしているのだ!」


 鬼頭先生、波照間先生がすでに到着していた。

 

「仮面の男……。なるほど。とりあえず敵対する意思は見受けられますねぇ」

「呑気に言ってる場合ですか。こいつらを放置していると生徒に危害が及ぶのです。ただちに排除せねば」

「そうですねぇ」


 先生たちも戦闘態勢を整えていた。

 仮面の男たちはたじろぎ、そして。


「一人ならまだしも複数人、強敵が来た。今日のところは撤退だ。目的不達成。全員速やかに逃げよ」


 そういって、六人、散らばり逃げ始める。

 私は深追いしようとしたが、波照間先生に止められた。


「ばらばらに逃げられたら追っても無駄ですよぉ。一人捕らえたところで袋叩きにされるのがオチでしょう。仕方がありませんので、危害が及ぶ前にこの訓練を中止しましょうねぇ。あのような輩がいる島に長く滞在するのは危険ですので」

「後日、十将全員、先生方全員でこの島の捜索だ。何なのだあいつらは」

「黒刄ちゃん曰く、任務とか言っていたみたいですよ?」

「ですねぇ。目的不達成ということを言い残していきましたからぁ。何かしら目的があってきたんですよぉ。しかも、その目的は僕たちの生徒の中にいるとみていいですねぇ」

「何か心当たりはありませんか? そういう狙われてる人とか」

「……黒刄ちゃんじゃない?」

「どういうことですかぁ?」


 由香里先生は私が洗脳されかけたことを伝えた。


「なるほど。その可能性は高いですねぇ。黒刄ちゃんは強いけど魔力量が低いですからそういうのにかかりやすいですもんねぇ」

「となると、黒刄を何としても手に入れたい連中ってことか? 厄介になるなら殺せばいい話ではないか」

「洗脳しやすいのなら自分たちの手駒にしたほうが良いという考えなんでしょうねぇ。強く従ってくれる戦士はどこの界隈も欲しいものですから」


 やっぱり狙いは私なんだろうか。

 白杖さんは私がここで洗脳されて敵組織に連れていかれるといっていた。そして、その物語終盤で敵として現れて、正気を取り戻したかと思ったらなんちゃらの狭間に飲み込まれて……。

 私は使い捨てのコマのようにされるということ。

 その白杖さんが言っていた物語で、私を連れて行ったのがわざとだとしたらなんとなく納得はできる。


「その組織のことを調べなければな。だが、仮面をかぶっていること以外の情報がないのが困った」

「なら私が洗脳されたふりしてもぐりこみますか?」

「さすがにそれは……」

「狙いが私なのだとしたら、一番もぐりこみやすいと思います。何も手掛かりはありませんし……」

「だが、洗脳しなおされたらどうする? 耐えれるのか?」

「それが問題ですよね」


 私は魔力耐性がないに等しい。

 すぐに洗脳されるのは大きな弱点だ。もちろん、不意を突かれたり拘束されたりしなければそういうのはかかる前に相手を倒せるのだが、潜入する手前そういうことはできないから……。


「潜入するのだとしたら、それを簡単に解ける人間が欲しいですねぇ」

「水原先生とかは?」

「彼女は有名人だ。それに、彼女の性格も知れ渡っているからその組織にもぐりこんだところで怪しまれるだけだろう」

「……白杖」


 私は白杖さんの名前を出す。


「白杖さんはどうでしょう」

「白杖さん?」

「彼女は魔法に関しては鍛えれば天才的だと思うんです。水原先生に師事し、魔法をマスターしたなら白杖さんとともにいきたいです」

「そうだな。それがいい」

「だけれど白杖さんはいってくれますかねぇ。彼女は明るいですが、危険なところに自ら行こうとは……」

「いきます!」


 と、林のほうから声が聞こえてきた。

 白杖さんがずんずんと歩いてきて、私の隣に立つ。


「私もその組織に行きます! 黒刄ちゃん一人じゃ危ないし!」

「わお、勇敢」

「わかりました。ですが、二人とも。無理は禁物ですからねぇ。それに、白杖さんはまだ魔法をマスターしておりませんので、明日、水原先生にしごいてもらいますよ。急ピッチで仕上げます」

「の、望むところです!」

「よし、まとまったな。では、白杖。お前はテントに戻れ。私たちも持ち場に戻るとしよう。由香里先生は黒刄とともに監視お願いしますね」

「はぁーい」


 波照間先生、鬼頭先生はそれぞれ持ち場に戻っていった。

 私たちも白杖さんの班の監視に戻ることにした。









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