魔力ゼロの欠陥皇太子。
そんな評価から始まるこの物語の主人公、フェスタローゼ姫。
物語の始まり時点では、与えられた地位に、不安気に仕方なく収まっているような、何処か後ろ向きな印象の女性でした。
しかし、彼女の魅力は、周りの人々から与えられる愛情や信頼を、歪むことなく受け取り、己の力と変えていく靭やかな強さにあります。
次々と降りかかる苦難に潰されるかと思いきや、徐々に芯の強さを見せて逆に輝きを増していく彼女。
特に第二部になってからの彼女の成長は、読んでいて胸熱くする場面も多く、主人公の成長物語を好まれる方には堪らない展開です。
緻密な設定や、洋風でありながら馴染みのある和風要素を取り入れた世界観など、おすすめする部分はたくさんありますが、シンプルに主人公の成長を応援するだけでも、十分楽しめる物語です。
魅力的なヒロインの成長を、ぜひともご覧あれ!
優しいけれどもただ気が弱いだけとも言える、そんな姫様フェスタローゼが、兄上の死によって新たな皇太子となっている現在。そんな状態より物語は始まります。
皇太子様はこんなだし、しかも魔法が使えないし。霊感詐欺に簡単に引っ掛かりそうになるし。と、頼りない。
頼りなさすぎて、「ふさわしくない」と引きずり降ろそうとする勢力もいるわけです。
そんな中での権謀術数宮廷劇。
人物たちの野心やプライド、怨念が飛び交います。
でも、「ふさわしくない」と思われてしまうこと自体は、仕方ないのかなあと思います。優しく真っすぐだなんて、一般人としての美徳でしかないですからね。国を任せるにはどうなのか。
アルスラーン王子や、劉備や劉邦のような、突き抜けた度量など欠点を補って余りあるものがあればまだ良いですけど。
しかし、スローな速度ではありますが運命に翻弄されているうちにフェスタローゼも成長して行くのです。……という兆しを感じるところまでしか、私は読んでいないので詳しくは語れませんが。
フェスタローゼと仲間たちは、ドロドロ渦巻くなかをどう生きてゆくのか。
願わくば「優しく」「真っすぐ」は失わないで欲しいなあ。
最初は、ちょっと心配になりました。「このお姫様、大丈夫かな?」と。しかし、要らぬ心配でした。過去の悲しみに囚われ、現在に立ち向かえず、未来に怯えていた少女は、多くの気付きを得て、一歩、また一歩と、着実に前に進み始めました。
用語解説が必要になるほど作り込まれた世界観は圧巻の一言ですし、その中で生きる登場人物たちも、とても生き生きとして魅力的です。特に主人公は、最初が少々頼りない印象だっただけに、一生懸命頑張り始めた姿は、応援せずにはいられません。その健気さの上に、これでもかこれでもかと降り注ぐ艱難辛苦は中々に辛いものがありますが、これらを乗り越えた先にある彼女の到達点を、是非見届けたいと思います。
昔ながらの王道ヒロイック・ファンタジーがお好きな方は、是非。
この物語に興味を持たれた方、まずは「用語説明」をご一読下さい。
…どうです?ちょっと類を見ないほど緻密じゃないですか?
この様に、細部にまで練り込まれた世界で展開されるのは、魔力がないが故に欠陥品呼ばわりされる主人公フェスタローゼ姫の成長と、彼女を取り巻く人物達を描く群像劇です。
緻密なのは世界観に限った話ではありません。描写もまた非常に細やかです。複数人が登場する場面はまさに本領発揮。生き生きと動いて話す登場人物達に、心が踊るはずです。
物語の展開については、敢えて触れません。個人的には、フェスタローゼに畳み掛ける辛苦の果ての第二部を、とにかく読んでいただきたいです。
見た事も聞いた事もない世界の風薫る物語、時間を作ってでも是非味わってみる事をお勧めします。
主人公はなぜか魔法が使えない姫フェスタローゼ。
性格は優しく正義感が強く、勉強熱心で思慮深い。
でも物語冒頭では、弱々しく頼りない雰囲気。
そんな彼女が周りの忠臣や、他国の王子に支えられながら、次第に強くたくましく成長していきます。
読み進めるうちに、フェスタローゼが魔法を使えない理由にも秘密があるようだと分かります。
また過去に起きたことにも隠されている内容が多く、ミステリー感覚で楽しめます。
また世界観が東洋と西洋をミックスしたような、
フィクションですら見たことない異世界が作り上げられているので、
展開の想像がつきにくいのも、おすすめポイントです。
特に宮廷政治のポスト名など、すべてオリジナルのものが用意されており、緻密な設定に驚かされます。
でも一番の魅力はキャラクター一人一人に人生があり、生き生きとしている点。
しっかりと腰を据えて、大切に読み進めたい作品。
ぜひあなたもフォーン帝国を訪れてください!
ヒロインは17歳。二年前、皇太子であった兄が不慮の事故で亡くなり、突然、皇太子となる……が。
・皇族なら普通に使える精道(せいどう。魔法のようなもの)が、何故か一切使えない。
・従兄弟の妹姫が意地悪マウントをとってこようとする。
・本人、優しく控えめな性格。すぐ人に謝る、腰が低い女性。
皇太子にふさわしくないんじゃ……。
と、密かにヒソヒソ噂される日々。
心労が絶えません。
しかし、ヒロインは、他人を責めたり、悪口を言ったりはしません。
優しく、慈愛に満ちているのです。
そんなヒロインを取り囲むキャラ達が実に魅力的。
・きっぷの良い側仕えの女性。
・優しい異国の王子。
・死んだ前皇太子とヒロインを比べてばかりのしょーがない騎士。
・めっちゃ美男の大人の官僚。
・チャラチャラ派手を装う情報通の貴族。
・ヒロインを守りたい(従兄弟の)弟。声変わり前♡
もう、群像劇といってよい、キャラ達の濃さ。
それが、面白いんですよ。
世界観も緻密に作られ、独自の用語で、フォーン帝国に、読者をいざなってくれます。
物語は丁寧に綴られ、読みにくいという事はありません。
作者さまが、この物語を大切にしているのが伝わってくるようです。
面白いですよ。
ぜひご一読を!
欠陥品と蔑まれていた姫太子が、悪神に奪われた家族と祖国を取り戻す。
物語としては明快でありながらも、綿密に作り込まれた文化や制度、風習が、『ここではないどこか』の世界観をきっちりと組み上げていて、そこに生きる人々、そこにある暮しを等身大で描く様は見事だなと思います。
そういった『キャンバス』があってこそ、随所に見られる繊細な色彩感覚を持ち合わせたキャラクターの心理描写が物語に一層の深みを与え、主人公とその周辺だけがいるのではない、壮大な世界の広がりをじっくりと感じさせてくれる、そんな作品だと感じました。
どっぷりとその世界観に浸る。物語を読むという本来の意味での楽しさを満たしてくれる、そんな作品だと思います。
大国継ぎし 若き乙女は
欠陥品の 皇太子
魔力を持たぬ 憂の皇女が(うれいのみこが)
その運命に 抗わん
非常に練り込まれた、独自の世界観と様々な設定を、巧みな文章力で見事に表現している、とても重厚なファンタジー小説です。
登場人物の内面や、その人となりが丁寧に描かれており、数多くのキャラクターが登場するにも関わらず、各々が活き活きとこの世界で物語を紡いでくれます。
物語の展開としてはゆっくりですが、その分じっくりと深みを増していく世界に、引き込まれていくこと間違いなしです。
昨今流行りの転生転移もない、国家間の政治が絡んだシリアス重視の宮廷闘争群像劇……と言われると、少し読みづらいと感じてしまう方もいるかもしれませんが、そのテーマをもってしてここまで読みやすく、読者を惹きつけることができる本作品は非常に稀有な存在であると思います。
是非一度、一読していただきたい、名作です。
最新55話まで拝読してのレビューです。
まず飛び込んでくるのが緻密に設計された舞台であり、硬質でしっかりとした文章と相まって重厚感を出しています。
海外ファンタジーを彷彿とさせ、テンポもゆっくりで、登場キャラの内面にしっかりと入り込んでいきます。
そう書いてしまうと、かなり読みにくいのでは?と思うでしょうが、そんなことはありません。
硬派な地の文のわりに会話文が意外に多く、それはやはりキャラの特徴を出すため比較的柔らかくなっています。この緩急が読みやすさを演出しています。
タグにあるとおり、昨今の流行り要素は全くありません。
宮廷闘争群像劇・心理描写重視・シリアス・転生転移なし・戦記・政治と並ぶため、ここだけ見て敬遠してしまう読者が多いかもしれません。
でも、ちょっと待ってください。それではあまりに勿体なさすぎます。
本作の傾向上、読み手を選んでしまうところは仕方がありませんが、まずは1章の数話だけでも読んでみてください。
※3章最後に登場人物と用語集があるのでそれを参考にするとよいかもしれません。
メインとなるのは陰謀にはまって逃亡を余儀なくされたフェスタロ―ゼ姫17歳。彼女がどうやって国と地位を取り戻し、安寧を導いていくのか。
陰謀渦巻く群像劇ファンタジー、流行りものに食傷気味の方に是非とも触れてほしい作品です。
第1部第1章読了時点の感想です。
古典的宮廷ヒューマンドラマと現代的ファンタジー要素を融合させた、愛憎相半ばする登場人物の人間関係に焦点を当てている硬派な作品──というのが僕の第一印象です。
緻密に練り上げられた設定と世界観、そして個性豊かな各人による群像劇の今後に期待を持たせるような内容となっており、目を見張るものがあります。
現時点(5/19)でまだ第1部が完結していない様子から見ても、ストーリーの進行は非常にゆっくりとしているようで、個人的な意見ですが、登場人物の名前、作品の諸設定、個々の関係性などを覚えるのが精一杯で、作品自体の方向性(最終目標)が何処に設定されているのかが分かり辛いと感じました。
豊富な語彙と宮廷ドラマへの造詣の深さが感じられる物語は、一読の価値ありです。文学的見地からも非常に参考になるので、今後も読み進めさせていただきます。