繊細な色彩感覚が描く、濃密なヒロイック・ファンタジー

 欠陥品と蔑まれていた姫太子が、悪神に奪われた家族と祖国を取り戻す。

 物語としては明快でありながらも、綿密に作り込まれた文化や制度、風習が、『ここではないどこか』の世界観をきっちりと組み上げていて、そこに生きる人々、そこにある暮しを等身大で描く様は見事だなと思います。

 そういった『キャンバス』があってこそ、随所に見られる繊細な色彩感覚を持ち合わせたキャラクターの心理描写が物語に一層の深みを与え、主人公とその周辺だけがいるのではない、壮大な世界の広がりをじっくりと感じさせてくれる、そんな作品だと感じました。

 どっぷりとその世界観に浸る。物語を読むという本来の意味での楽しさを満たしてくれる、そんな作品だと思います。

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