謀略渦巻く宮廷闘争に巻き込まれた無力な王女の奮闘劇

第一部完という事で、ここまでの時点でのレビューです。
兄の不慮の死去により世継ぎに選ばれたものの、王族でありながら魔力を持たないがゆえにそれを快く思わない者たちによって廃嫡の陰謀に巻き込まれていくフェスタローゼ姫、
主人公が魔力ゼロの落ちこぼれ……ってそれってゆくゆくはチートスキルで無双するんでしょ?とついつい思ってしまいますが、見下していた連中を見返してざまぁ、みたいな底の浅い話には到底収まらず、そんな主人公の皇太子位を巡って様々な思惑の入り交じる宮廷内の複雑な駆け引きが描かれます。
実際のところ無能力だからと主人公を理不尽に蔑む人々はごく一部のカルトじみた血統主義者として悪辣に描かれ、逆に主人公に助力する顔ぶれは「エフィオン」と呼ばれる魔力に通じた頼もしい騎士たちであったりと、チートスキル無双ものにありがちな一方的な善悪付けは意図的に回避されているように見受けられました。
アンチテーゼ、とまで言っていいかどうかは今後の展開次第ですかね……。
(結局なんらかのスキルに開眼する展開自体は充分あるかとは思いますし……)

そういった一筋縄ではいかない宮廷模様に、さらに国外の事情や過去の武力断行の遺恨が絡んでくるなど、今のところ華麗なアクションだったり大がかりな戦争のような派手な展開こそ乏しいですが、そういった人間模様や対立構図を眺めているだけでも充分に読み応えのある作品と感じました。
それだけに、陰謀に巻き込まれた肝心の主人公が本当に世間知らずの深窓令嬢という人となりで、立ち振る舞いに苛立たしさを覚える局面も無くはないのですが、ゆくゆくは素晴らしいリーダーに成長していくのだ、という期待を込めて物語の進展を見守りたいと思います…。

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